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グラミー2冠、1999年生まれ。ジャズ界の若き歌姫、サマラ・ジョイを知っているか?

アメリカでは2010年代の後半から若い才能がどんどん出てきて、シーンを賑わせている。2023年、グラミー賞で2部門の受賞を果たしたサマラ・ジョイもその一人だ。彼女は、70年や80年の古い曲を題材にして、現代に普遍的な音楽を届けている。

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text: Mitsutaka Nagira / edit: Kaz Yuzawa

スタンダード復活の鍵を握る若き歌姫

サマラ・ジョイが歌うムーディなジャズスタンダードを何も知らずに聴いたら、1999年生まれの歌だとは誰も思わないだろう。彼女のトラディショナルなスタイルは今、TikTokやYouTubeで人気を獲得している。かと思えば、最新アルバム『Linger Awhile』はグラミー賞2部門を受賞。人気も評価も圧倒的だ。今や誰よりも広く古典的なジャズを届ける存在になっているサマラの魅力は、どこまでも自然体でジャズを楽しんでいる姿だろう。

サマラ・ジョイ『Linger Awhile』

「私は両親の世代の音楽であるジャズに自然に惹かれてきました。ジャズを始めたら、その伝統を尊んでいる人がたくさんいて、中にはジャズを演奏することに自分らしさを見出している人がいることもわかりました。そうしているうちに、私にとって最も自然に感じられる表現はジャズだって思うようになったんです」

とはいえ、彼女が扱う題材は70年や80年も昔の古い曲が多い。それを現代に届けるためには普遍性のある歌詞が重要だ、と彼女は語る。

古いスタンダードに宿る普遍性を見つける

「古いスタンダードの中から現代のリスナーに訴える曲を選んでいます。『My Ideal』は理想の人を見つけたいというテーマだし、アビー・リンカーンの『Straight Ahead』は人生の旅路は人それぞれで、それぞれが与えられた道を歩んでいくというテーマ。どちらも普遍的ですよね」

昔の曲に手を加え現代にフィットする表現として蘇らせることもある。アルバム『Linger Awhile』では、トランペット奏者のファッツ・ナヴァロが47年に録音した「Nostalgia」にオリジナルの歌詞をつけて、新たな歌ものを作り出している。

「ファッツ・ナヴァロは天才だったけど50年に26歳で亡くなった。もし、彼が自分の後世への影響を見届けていたら、何を言っていただろう。恋をして誰かに愛されていたら、どんなことを思っていただろう。彼のプレーだけでなく、そんな生きざまも想像して、歌詞を書きました」

新しい/古いではなく、普遍性を基準に音楽を捉えているところが面白い。そんな彼女はTikTokでさえこんな言葉で語ってしまう。

「TikTokは、みんなが自分なりに自分らしい表現を発信している場所。そこで私も、自分自身を表現したい、自分が好きなことをみんなとシェアしたいと思ってやっている。ジャズも私にとっては同じで、ジャズが自分自身を表現できる音楽だということを伝えているつもりだし、そのための私のアイデアをシェアしている。だから私は、TikTokにもジャズにも惹かれるのかもしれません」

SAMARA JOY(ボーカリスト)
©Aflo