「魚を見る」だけじゃない楽しみ方がある!これからの都市型水族館2選

楽しみ方は、「魚を見る」だけじゃない。近年そんな都市型水族館が増えている。コンンセプトに則(のっと)って、空間や展示方法まで様々な工夫を凝らす。街中にあるから、好きな時にフラっと寄って、水槽をじっくり眺めたい。

初出:BRUTUS No.1003「通いたくなる水族館。」(2024年3月1日発売)

photo: Yoshitaka Morisawa / text: Aiko Ichida

これからの都市型水族館

AOAO SAPPORO

バーや仕事場を備えた、日常に溶け込む水族館

2023年7月、札幌中心部は狸小路商店街の新たなランドマーク〈moyuk SAPPORO(モユク サッポロ)〉内にオープン。平日は、街中でゆったりと自然に接する大人たちのオアシスとなっている。

その中には世界最小のペンギン「フェアリーペンギン(コガタペンギン)」など、250種4,000点の水生生物が暮らす。バックヤードを開放したり、デジタルアートを用いるなど、展示には工夫を凝らす。また、音を起点に行動をデザインするサウンドコミュニケーションに基づいて制作されたBGMや、館内に漂うナチュラルアロマの香りなど、それぞれの世界観に没入できる“癒やし”の演出も。

「魚を見る」だけじゃない!これからの都市型水族館
フェアリーペンギン(左)とキタイワトビペンギン(右)を飼育。羽のバンドが個体識別の目印に。推しはどの子?

館内はどこでも持ち込み飲食が自由。仕事帰りにはバーに立ち寄り、「酒のアテはクラゲか、ペンギンか?」。そんな気分でビール片手にお気に入りの水槽をのんびり眺めるひとときも格別だ。ちなみにWi-Fiやコンセント利用が可能なコワーキングスペースも備える。まさに“通いたくなる”水族館だ。

AQUARIUM×ART átoa

アクアリウムとアートが奏でる物語の世界

惑星を思わせる直径3mの球体水槽〈AQUA TERRA〉は世界屈指のスケール!悠々と泳ぐ魚に見惚れていると、レーザーとミストのショーが幕を開け、客は光のベールに包まれる……。

神戸・新港エリア〈átoa〉のテーマは「アクアリウムとアートの融合」。館内の8つのゾーンに魚の生息地別区分は存在しない。ここにあるのは“洞窟”“精霊の森”“宇宙”などの別天地。例えば〈MIYABI 和と灯の間〉のフロアの物語は、外国人が思う日本の春夏秋冬。繊細な切り絵と多彩な光を組み合わせたインスタレーションが、足元を優雅に泳ぐニシキゴイなど日本由来の生き物を際立たせる。

飼育員はそれぞれのゾーンの世界観に合う生き物をキュレーション。不可思議な森〈ELEMENTS 精霊の森〉では、熱帯の淡水魚が揺らめくアクアテラリウムの脇で巨大なゾウガメが歩き回る。水・生き物・アートが幻想的に交わる独創性に、誰もが魅了されるだろう。