SF沼のハマり方に目覚める
「宇宙、ロボット、未知のテクノロジー……。きっかけはアニメ『機動戦士Vガンダム』と“勇者シリーズ”で、物心ついた頃からずっと夢中でしたね」と目を細める浦井のりひろさん。
映画、ゲーム、漫画、たまに読む小説など、休日に触れる娯楽はSFものがほとんど。ここ数年その興味が増す一方で、SF好きであることを自覚し「もっと本格的に潜りたい」と思うように。そんな浦井さんの言葉に頷きながら、『S-Fマガジン』編集長の溝口力丸さんは語る。
「浦井さんと同じ感覚の方は増えてきていると思います。今は小説、映画、ゲームといろんな場所にSF好きがいる時代。1959年の『S-Fマガジン』創刊以降、コアなファンも存在し続ける中で、ポップカルチャーとして受け入れられている側面が拡大していますよね。
今僕らは2ヵ月に1回雑誌を出していますが(偶数月25日発売)、特集の内容は様々で、過去にはSFゲームの特集も。僕もゲーム好きなので書評や映画のレビューと並べて、SFゲームの情報を紹介することもあります」
『Fallout』『Cyberpunk 2077』『アーマード・コア』等、ゲームの話題で盛り上がる2人。「ああ、それもSFか」とつぶやく浦井さんに、溝口編集長が続ける。
「SFはハードルが高いと思われがちですが、本来もっといろんな人が自由に楽しんでいいものだと思うんです。さらに言うと入口を広げたくもあり、逆にハードSFと言われる小説の魅力も新たな人に伝えられたら嬉しい。SFの精神がいろんな人に共有されるようになったら面白いですよね」
溝口編集長おすすめ、SF沼のハマり方、いろいろ
1:まずはアンソロジーを読んでみる
いろんなセンス・オブ・ワンダーに触れたい!という人は、小説のアンソロジーから入るのがオススメ。「一冊に複数の書き手を集めた短編集は、自分好みの作家を探すのにちょうど良いと思います。また“猫SF”のようなユニークなテーマで編まれた本もある。まずは書店のSF棚に行って直感的に惹かれるものを手に取ってみては」
2:オンラインで「サンリオSF文庫」に触れてみる
1978〜87年にサンリオが刊行していた幻のSF文庫「サンリオSF文庫」。この春、国立国会図書館のデジタルコレクションで無料公開されていることが話題に。「海外作品の翻訳で絶版タイトルもあるため、いまだに根強い人気を誇っています。こういった上質なレガシーにネット上で手軽に触れられるのは良いことだと思いますね」
3:毎年の「SFコンテスト」に注目してみる
SF小説界は、近年新人発掘にも精力的。2013年に復活した早川書房主催のSF小説公募新人賞「ハヤカワSFコンテスト」もその一つ。「第168回直木賞を受賞した小川哲さんも、このコンテストの出身者。毎年、魅力的かつ個性的な作家が続々登場しているので、受賞作やノミネート作に注目するだけでも世界が一段と広がるはずですよ」
4:『SFカーニバル』で作家に会ってみる
2022年から年1回東京・代官山 蔦屋書店で開催されているイベント『SFカーニバル』。ブースが立ち並ぶ賑やかな雰囲気の中、「日本SF大賞」の贈賞式やトークショー、作家勢による大サイン会等が行われる。「主催は日本SF作家クラブ。作家本人に会えるサイン会が大人気です。気になる作家に会ってから作品に触れるのも良し」
5:『文学フリマ』のSFブースをチェックしてみる
作り手による文学作品の展示即売会『文フリ』でも、実はSF熱が高まっている。「大学のSF研究会がそれぞれの活動を面白く冊子にまとめて販売していたり、プロのSF作家がなにげなく同人誌に参加していたり(笑)。SFの今を味わうにはピッタリな場所ですし、カタログから“SF”の文字を探すだけでもいろんな発見につながります」