Feel

お化け屋敷は、作り手で選ぶ時代です。演出で魅せる怖がらせのプロたち

お化け屋敷は究極のホラー。あらゆる恐怖を知り尽くした、人を怖がらせることのプロたちがしのぎを削っている。作り手たちの個性を知り、自分が最も恐怖を感じるお化け屋敷を見つけたい。

photo: Koh Akazawa / text: Koji Okano

怖がらせ方を知り尽くした、熟練のお化けに驚かされたいなら

齊藤ゾンビ

2006年に開業した『台場怪奇学校』。廃校を舞台にしたお化け屋敷は、なぜロングランを誇るのか。プロデューサーの齊藤ゾンビさんは真顔で「ここにはお化けを呼び出せる人間(召喚士)がいるから」と言う。この“召喚士”が体得するのが、リアルな心霊体験を再現するための驚かし方の細かな技術(いわく、「サイトウリアル方式」)。

幽霊が動く方向やささやく声の音量、生首が飛んでくる角度など、すべてが最大限の恐怖を与えるために計算し尽くされている。その評判は台湾にも。2023年夏には、新北市で『東京の恐怖学園』が開催され、新たなファンを獲得した。

東京『台場怪奇学校』内の廊下
『台場怪奇学校』内の廊下。壁にはおどろおどろしい筆致の毛筆作品が並ぶ。先に進むのを躊躇(ちゅうちょ)させる、不穏な気配に満ちた空間。

オーソドックスな箱型の魅力を、存分に味わいたいなら

五味弘文

五味弘文さんが1992年以降、監修する〈東京ドームシティ アトラクションズ〉のお化け屋敷。2023年の夏は『怨霊座敷特別演出 呪いの硝子窓』が披露された。夫と愛人に騙されて憤死した女性・夜雨子を主役にした通常版をアレンジ。度肝を抜かれるのは、磨りガラスを使った映像の演出だ。

「まるで人間がガラスの箱に閉じ込められたよう。最新の技術で、男女の物語が目新しく生まれ変わりました」。

今後もオーソドックスな箱物のお化け屋敷の制作に軸足を置きたいと話す五味さん。一方で『呪怨 THE LIVE』では演劇に挑戦するなど、活躍の場が広がっている。

お化け屋敷『怨霊座敷特別演出 呪いの硝子 窓』
ガラスの中にいるのは人間?『怨霊座敷特別演出 呪いの硝子窓』では神戸芸術工科大学・志茂浩和教授が開発した技術を採用。

徹底的に作り込まれた、非日常の世界に没入したいなら

オバケン

突然の爆発に驚き逃げ惑う参加者に、ゾンビが襲いかかる。映画顔負けの展開は、オバケンさんが自社の廃キャンプ場で催行するツアー『ゾンビキャンプ』の一幕。1泊2日で際限なく戦慄の瞬間が訪れる。

「お客さんがお化け屋敷に没入できるかは、キャストの技術よりも接客の気持ちが重要。就寝の直前まで、寸暇を惜しんで脅かし続けます」。一軒家を用いたお化け屋敷『畏怖 咽び家』では、最寄り駅で不動産屋に扮したキャストが出迎えるなど、客を我に返らせない作り込みも。キャストを使わないサウンドホラーでも持ち味は冴え、客を物語の世界に没頭させる。

廃キャンプ場ツアー『ゾンビキャンプ』の様子
『ゾンビキャンプ』には、自衛官や警察官役の演者も登場。その演技や小道具のリアルさが、より恐怖心を誘う。

独創的で新感覚の恐怖を、いち早く体験したいなら

怖がらせ隊

2020年にアメリカ・CNNなどに取り上げられ、世界で話題を呼んだ『ドライブインお化け屋敷』(東京タワーなどで開催)。コロナ禍でじかに客と触れ合えない中で、岩名謙太さんが試みたのは、客を車に乗せて窓越しにゾンビや幽霊を出現させる独創的な発想だ。

「車のフロントガラスが血まみれになる仕掛けも好評でしたね」。ほかにも教室や電車内を舞台にするなど、限られた空間で最大限の恐怖を味わわせてくれるのが、怖がらせ隊の大きな魅力。その演出を支えているのが、客の予想を鮮やかに裏切る練られたストーリーと、立体音響などの最新テクノロジーだ。

『ドライブインお化け屋敷』の様子
『ドライブインお化け屋敷』の様子。音声の案内に従って、客がある行動をとった瞬間から、次々とお化けが襲いかかってくる。