村上亮太
面白いですね。1階にフードコート、2階に100均ショップや〈西松屋〉が並び、その中に現代アートのギャラリーがある。なぜダイエーに出店したんですか?
梅津庸一
2014年に相模原で始めた〈パープルーム〉の新たな拠点を探している時、テナント募集の貼り紙を見つけて。ここ数年、有名ギャラリーや芸術祭ありきのアート業界に閉塞感を覚えていたので、ここでなら日常と美術が地続きだということを体現できるかも、と感じたんです。
実際、肉や野菜、日用品と同じ搬入口から美術品を納品しているし、館のチラシにも「梅津の銅版画20%オフ!」と載せたら7点売れました(笑)。
村上
その現象がもはや作品ですね。
梅津
でも入店審査は大変でした。ウチは売り上げを100%作家に渡すので儲けはない。商売が基本のダイエーからしたら「この人は何をしたいんだ?」って。
村上
確かに(笑)。それで、柿(こけら)落としの展覧会は……。
梅津
大盛況!お客さんの7割が地元の方でした。スーパーへ日用品を買いに行く感覚でマニアックな美術品が見られる、その魅力は伝わったと思う。村上さんのコレクションも、スーパー〈まいばすけっと〉が題材ですよね?
村上
はい。“まいばす”という存在は、現代の象徴だなと思って。日常に必要なものはほぼ手に入るけど、満たされなさもあり。でもそういう場所に自分たちは生かされている。
地元のダイエーでもリサーチしたんですけど、僕らデザイナーが忘れていた“普通の服”の些細な装飾や仕立てにぐっとくるものがありました。そういう部分に焦点を当てて丁寧に作れば「本当の日常服」を表現できる気がしたんです。
梅津
ファッション業界のことはどう見てますか。僕は今のアート業界に疑問を感じつつも、魂はやっぱりそこにある。ただ、より自由に動ける海老名にリモートしてる感覚です。
村上
僕はメインストリームに認めてほしい気持ちもあります。でもそこに入り込みたいのではなく、例えば「東京=カワイイ」みたいなすでに記号化された日本のファッションの価値観を自由に拡張できたらいいな、と。
梅津
じゃあ村上さんも、ウチのギャラリーで新しいことをしません?
村上
ぜひ!スーパーでファッションの展示ができたら最高ですね。







