編集部ライターが疾走!Uber Eats体験記

2020年8月号のBRUTUSは自転車特集。編集部ライターの松村が新人Uber Boyとして東京を疾走する。

Photo: Keisuke Fukamizu / Text: Naoto Matsumura

編集部から「8月発売号は自転車特集です」と聞き、真っ先に思い浮かんだのは、颯爽と走るUber Boyの姿だった。打ち合わせで編集担当に「Uberの人とか気になりますよね」と、軽はずみな発言をすると「だったら体験してみない?」と、まさかの返答(笑)。またもや軽い気持ちで「いいですね!」と安請け合い。

そうは言っても自転車なんて久しく乗っていないし、家にはチャイルドシート付きの電動ママチャリが1台あるだけ。不安になりながらも、スマホでドライバー登録。アプリに言われるがままアマゾンでUberバッグ4000円を支払い、初仕事のタイミングを窺った。

当日の取材態勢は配達の模様をカメラが背後から自転車で追走。ストレートハンドルのスポーツバイクまでカメラマンに拝借し、文京区本郷界隈で決行した。忙しそうな昼時にアプリを起動し、オンラインにすると速攻で仕事の依頼が。ピックアップする中華料理店までは現在地から4分と出ていた。速攻で自転車を走らせ、到着。新人Uber Boyに対して、店員は慣れたもので、ビニールに入った弁当をサッと渡して、ハイ終了。つれないです。

指定された住所をグーグルマップに打ち込む。届け先まで約5分。ながら運転もままならないので、ある程度の道順を頭に叩き込み、また自転車を走らせたものの、幅寄せなどのいやがらせや、道を間違えたりで、届け先まで10分以上もかかってしまった。

ライター松村
編集部ライターの松村

へまはまだ続く。マンションのエントランスに到着した僕は、達成感のあまり、部屋番号を確認する前に、配達完了ボタンを押してしまったのだ。インターホンを押そうにも、届け先の部屋番号がわからず、完全に立ち往生……。
異変に気づいてくれたのか注文者がエントランスに現れてくれ、平謝りしてなんとか事なきを得た。ホッ。

初仕事の報酬は700円。稼ぐのは簡単じゃないことを32歳にして再認識(後から知ったのだが、この場合はパートナーセンターに電話をすれば大丈夫だそう)。

なんとなくの要領がわかったので、再びアプリをオンラインにすると、またすぐに依頼が。向かう先はなんと目の前にある〈大阪王将〉!横断歩道を渡るだけという近さに思わず笑みがこぼれる。店舗でゴキゲンに食事を受け取り、配達先をスマホで見ると、依頼者は西日暮里!

大阪王将ピックアップ
大阪王将ピックアップ。後に幾多の坂を越えるとは。

グーグルマップによると現在地から徒歩35分。距離は約2.5㎞。一瞬台東区を通過するものの、西日暮里のある荒川区までは、自転車なら15分といったところだ。楽勝、楽勝って感じでこぎだしたが、そんな余裕もあっさりと消え去っていく。このエリア、とにかく坂が多い。上り坂が僕をジワジワと苦しめる。

自転車慣れしていないせいか、太腿が悲鳴を上げ、お尻の骨もやたらと痛くなってくる。下り坂で風を感じて疾走?正直そんな余裕はほぼなく、むしろカッコつけずに自宅の電動ママチャリでやればよかったとひたすら後悔。

汗びっしょりで届け先のマンションに到着。今度は間違えまいと配達先に直接電話をかけた。ビルの3階の窓から顔を出してくれた依頼者に“1階のどこかに置いといてください”と告げられた。言われるがまま階段脇に置いたが、なぜか配達完了のボタンが押せない。この場合は置いた場所の写真を撮って送信する必要があったらしく、結局また手こずってしまった。2軒目にしてかなりの疲労感。

一見はこなれたUber Boy
一見はこなれたUber Boyだが、取材する余裕なんてなく、こぎにこいだ。

「まだやる?」というカメラマンの一言に、「もうおしまいにします」と即答。画面には今日の報酬に1300円と出ている。結局Uberバッグ代にも届かなかったみたい。勤務時間は約1時間。時給で考えると良い方かもしれないが、初めての僕にはちょっと過酷だったかも。

東京の街を颯爽と駆け巡るUber Boyにはそう簡単になれないことを知った今回の体験。Uber Eatsの配達を自転車でチャレンジしたいとお考えの方は、サイクル猛者を除き、スマホスタンドやヘルメットなどの装備を万全に。できれば電動アシストもお忘れなく(笑)。