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ツレヅレハナコがお取り寄せで旅をする。今朝は我が家で、東北の朝ごはん

旅に出たい。そう思っても、なかなか実現できないのが世の常。ならば、旅の思い出を取り寄せるのはいかが?食に通じたツレヅレハナコさんが訪れた先で出会い、感動し、取り寄せたごはんの記録。荷物とともに、現地の風、そして思い出がやってくる。

photo: Aatoko Imazu / edit: Akira Ikeda

米、また米を呼ぶ!
北国の豊かな食卓

文・ツレヅレハナコ

青森の友人宅へ宿泊した翌朝、目をこすりながらキッチンへ行くといつも朝食ができている。
テーブルに並ぶのは、季節の漬物、梅干し、筋子、焼き魚、そして炊きたての白米とアツアツの味噌汁。そう、全体的に塩分高め。だからこそ、ごはんが進んで仕方がないし、「これって酒のつまみだよね」と朝からふたりで昨夜の続きの日本酒を呑み始めたりもしてしまう。

「実家には、子どもの頃から“筋子入れ”とか“漬物入れ”とか、決まった蓋付き容器があったよ。朝、冷蔵庫からそれをテーブルに出すのが子どもの仕事」と聞いて驚いたが、秋田や岩手の友人に聞いても「もちろんあった」と言う。“筋子入れ”かあ。東京出身の私にその発想はないけれど、なんとも素敵な入れ物ではないか。

今回、東北の朝食を再現するのに、まず欠かせないのは魚介のおかず。数ある中でも、下北半島〈北彩(ほくさい)屋〉の「海峡サーモン」はイチ推しだ。津軽海峡の荒波にもまれて引き締まったサーモンの身に、ほどよくのった上質な脂。セット商品では西京味噌漬、吟醸粕漬、塩麹漬、甘塩味の4種類が届くけれど、私は地元〈関乃井酒造〉の酒粕で漬けられた粕漬がお気に入り。しっとり濃厚な味わいは、焼くだけでごちそうだ。

漬物は山形・鶴岡の老舗〈本長(ほんちょう)〉の「民田(みんでん)(茄子辛子漬」。300年以上前から鶴岡の民田地区で栽培されている在来野菜で、キュッとした食感とツーンと鼻に抜ける辛さがクセになる。

箸休めには、太くてジューシーな青森・十和田の長芋を。オリーブオイルでこんがり焼いて塩と七味を振ればホクホクねっとり。新たな長芋の味わいとなるだろう。

主菜、副菜とおかずが並んだところで、もちろん米と汁にはこだわりたい。パンチのある塩分に寄りそうのは、青森県のブランド米〈青天の霹靂〉。「甘くてもっちり」が主流な米業界の中で、真逆を行く「さっぱり」とした米。食べ疲れない味わいで、ついつい杯が進むのだ。

味噌汁の具には、国産大豆を贅沢に使った岩手〈嵯峨豆腐店〉の「野田塩もめん」がいい。沖縄の島豆腐かと思うほど、ずっしりとした重みと硬めの食感。加熱することで豆の風味が増す骨太な豆腐で、だし汁でしっかり煮ても存在感が薄れない。

そこに、秋田の家庭には必ず置いてある〈小玉醸造〉の通称「なまはげ味噌」をたっぷりと溶かし入れる。一般的な味噌に比べて米麹の割合が多く、やさしい甘口。この味噌汁を一口飲むだけで、東京にいても東北の食卓が目の前によみがえる。

東京では朝食をほとんど食べないのに、東北へ行くといつも朝が待ち遠しい。それは、この土地ならではの塩辛くて豊かな食材が、ズラリそろって待っているからだと思うのだ。

青森〈道の駅とわだ〉春掘り長芋、山形〈つけもの処 本長〉民田茄子辛子漬、秋田〈小玉醸造〉ヤマキウ特撰味噌なまはげ、岩手〈嵯峨豆腐店〉野田塩もめん、青森〈A全農あおもり〉青天の霹靂、青森〈北彩屋〉特選切身セット
青森〈道の駅とわだ〉春掘り長芋、山形〈つけもの処 本長〉民田茄子辛子漬、秋田〈小玉醸造〉ヤマキウ特撰味噌なまはげ、岩手〈嵯峨豆腐店〉野田塩もめん、青森〈A全農あおもり〉青天の霹靂、青森〈北彩屋〉特選切身セット2

1:〈道の駅とわだ〉春掘り長芋 3,000円(5kg)/畑で越冬させてから掘り出すのが、春掘りの長芋だ。土の中で冬の寒さに耐え、春の訪れを待ち、甘味を蓄えた長芋は驚くほどずっしりと重く、その熟成されたおいしさが特徴。
TEL:0176-20-8255/注文方法:電話、Fax、オンライン/HP:www.towadapia.com/

2:〈つけもの処 本長〉民田茄子辛子漬 411円(100g)/民田茄子は小ぶりで身が締まっていて漬物にぴったり。合成着色料、合成保存料不使用で、日本酒の友にも嬉しい庄内伝統の味。辛い場合は、袋から出し冷蔵庫に1晩置くとマイルドに。
TEL:0120-330-878/注文方法:電話、Fax、オンライン/HP:www.k-honcho.co.jp/

3:〈小玉醸造〉ヤマキウ特撰味噌 なまはげ(つぶ)388円(500g)/秋田県内シェアナンバーワンを誇る味噌。大豆の旨味と米麹由来のほんのりとした甘さが特徴だ。味噌汁、豚汁など汁ものとの相性が抜群。ぬた、味噌和えでも主役を引き立てる。
TEL:0120-147-877/注文方法:電話、Fax、オンライン/HP:shop.kodamajozo.jp/

4:〈嵯峨豆腐店〉野田塩もめん 720円(480g)/水は久慈の山の水、地元の名産品「野田塩」の製造の際にできるにがりを使用。豆そのものを食べているような濃い味わいで、湯豆腐、麻婆豆腐など加熱調理もぜひ試してほしい。
TEL:0194-75-2029/注文方法:電話、Fax、オンライン/HP:www.saga-tofu.jp/

5:〈JA全農あおもり〉青天の霹靂 2,050円*参考価格:2021年産(2kg)/2022年産は下記URLに掲載中。2015年に誕生し、7年連続「特A」を取得。食べ応えがあり、しかも重すぎない。粘りとキレのバランスも良く、おかずを選ばない。上品な甘味の残る味わいが人気。
注文方法:オンライン/HP:www.ja-town.com/shop/c/c1502/

6:〈北彩屋〉特選切身セット 8切 3,240円(4種類×2切れ)/津軽海峡の荒波が押し寄せる外海で養殖された張りのある肉質のニジマスが「海峡サーモン」。このセットではツレヅレさんが紹介するように、吟醸粕漬、西京味噌漬など4種類が届く。
TEL:0175-31-1868/注文方法:電話、Fax、オンライン/HP:shop.kaikyou.com/