デザイナーの息吹を感じる洋服は、もはやアート
自他共に認める買い物マスターの加藤忠幸さん。日本を代表するセレクトショップのバイヤーとくれば、目利きでないはずがない。自身のクリエイションの源にもなっているというのが、90年代後半から2000年初頭に買い集めたメゾンブランド。
「当時から〈メゾン マルタン マルジェラ(現・メゾン マルジェラ)〉や〈ヘルムート ラング〉は大人気だったけど、マルタン・マルジェラ本人がデザインを手がけていた1989年SS〜2009年SSのコレクションは世界的にも価格が高騰している。中でも僕が大好きだったのが、1991年にスタートした『アーティザナルライン』のミリタリージャケット。古着を分解して新しい洋服として再構築したもので、洋服というよりもはや一点もののアートピースという感覚さえある。
その後、リメイクものがめっちゃ流行ったけど、マルジェラは間違いなくその火付け役だったと思う。デザイナーのミリタリーものに弱くて、エレガントな洋服を作るメゾンブランドが作るパンクや軍ものに惹かれるんです」
洋服には商品として明確な定価があるけれど、付加価値が付くことで価格が上がることもあるという。
「ファッション業界にも昔から“御意見番”と呼ばれる方たちがいて、彼らの目に留まりブランド価値が上がり、入手困難で価格高騰、という図式はあります。けれどマルジェラのように作り手の心血が注がれた洋服が時代を超えても色褪(あ)せることなく愛され続けている。そこにモノとしての価値があると思うのです」