「ここ数シーズン続いていた、オーバーサイズやビッグシルエットというのがだいぶ落ち着いてきています。その流れもあり、膝下から真っすぐにストンと落ちた形の“パイプドステムシルエット”のパンツを推します。生地で言えば、コーデュロイが気分。今なら中畝(ちゅううね)でシンプルなものがいい。
そして、注目したいのが日本の新ブランドの〈カル〉。ファッションへのアプローチの仕方が独特で、もちろんパンツにもこだわりが詰まっています。最後はデニムスタイル。僕が好きなパリジャンのスタイルとして、こちらも欠かせない存在です」
シルエットは膝下からストレートのものを
〈ベルナール ザンス〉(右)のスラックスは、個人的にお気に入りで3年ぐらい前から穿いています。腿から膝までは太く、膝から下は真っすぐに落ちているシルエットが特徴的です。ザンスは、いわゆるパリの左岸スタイルと呼ばれているブランドで、品質の高さもピカイチ。テーパードとはちょっと違うニュアンスで、脚がきれいに見え、もしかしたら脚長効果もあるかもしれません。ちなみに、このLポケのモデルは販売終了していますが、創業者が好んで穿いたモデルといわれています。左のスラックスは、現在〈レショップ〉で販売中のもので、真っすぐ落ちるラインが美しいパイプドステムシルエットを採用した一本としておすすめです。
中畝のコーデュロイ素材が気分
今季は、ファッションのスタイル的にオーバーサイズからジャストサイズへとトレンドが変わっています。そうなると、洗練されたトップスに対してちょっと野暮ったいパンツを合わせたくなるんです。僕は洗練されたものと野暮ったいものとか、軽い素材で大きなシルエットとか、全体的にプラスマイナスゼロになるような感覚でバランスを取るようにしているんです。
そうやって考えると、中畝のコーデュロイパンツという選択肢は、とても合わせやすくて便利だと思います。〈コーディングス〉は、英国のカントリーウェアの老舗なので超クラシックですが、例えば、このパンツに新鋭ブランドのシャツを合わせるのが今のトラッドな着こなしかなと。
気鋭ブランド〈カル〉を取り入れる
個人的な解釈ですが〈カル〉は、ファッション文脈とは別もののブランドです。一見、クラシックに見えるかもしれませんが、超コンテンポラリーな服なんです。アート的というか、このパンツ一本にしても股上の設定が絶妙かつ縫製も隙がないほど完璧で、年齢を重ねたおじさんでもきれいに穿けるんです。
今現在クラシックと呼ばれて親しまれているものは、作られた当時はモダンで最先端だったはずですよね。そう考えると、僕の解釈が正しければ〈カル〉のパンツは、後世に残る名品になるんじゃないかと思います。逆に言えば、消費者としてもビジネス目線でも、こういう新しいブランドの波は、常に注視する必要があると思っています。
フレンチトラッドなデニムスタイル
デニムも僕にとってはトラッドに穿けるパンツの一つ。例えば、正統派のトラッドスタイルで着ようとすれば〈シャルべ〉のシャツにブレザーなど、すごくシンプルでムードが出しにくい。でもそれに〈リーバイス®〉の501XXを合わせれば強力なムードを出せるんです。30年間着ているツイードより目に見えて雰囲気が出せるのが501XXの強みであり真骨頂ですよね。
もし、僕がアメトラ好きだったら、たぶんジーンズをトラッドパンツに選んでいないかもしれません。なぜなら僕は、フレンチとかヨーロッパ目線で外しを入れた方が面白いと思っているからです。だから、自然と足元は〈オールデン〉ではなく〈ジェイエムウエストン〉を合わせますね。