Wear

Wear

着る

スマイルズ代表取締役社長・遠山正道の眼鏡のこだわり「流行では選ばない。哲学があるから身に着ける」

流行りのものを着るだけがファッションではない。むしろ、抗うかのように己の信じたモノを愛用し続けることに男の美学が潜んでいる。誰にも頼らない審美眼でアイテムを選び取り込んだこだわりの中に垣間見える、お洒落に対する独自の哲学。

photo: Masaru Tatsuki, Atsushi Ishihara / text: Tamio Ogasawara

一度会ったら忘れない
アイコン的役割を担った眼鏡

スープストックトーキョー〉や〈パス・ザ・バトン〉を手がける遠山正道さん。一度会ったら忘れられないその強烈なキャラクターは、眼鏡によるところが大きい。
「流行りのものはなく、いくつかある眼鏡もオーソドックスです。ただし、オーソドックスながらも個性の違いは出したいので、インパクトが強めのものを選びます」

そもそも、ファッションの流行についていくことには無縁であり、ブランドにも詳しくないという。だから、流行とは別の軸で眼鏡を選ぶ。オーダーメードで作る時はスタンダードな形に一味加え、自身の顔に合わせてきた。

「例えば、丸眼鏡を作った時は、通常はフレームが小さいものが多いので逆に直径60mmの特大サイズでオーダーしました。その後作った黒縁の丸眼鏡も60mm。眼鏡屋のスタッフに驚かれたぐらいの太さのラウンドフレームでオーダー。さすがに太くて強烈すぎたので、最終的には若干削ってもらいました。でも残念なことに、これは美術展のオープニングに行った時など、デヴィッド・ホックニーに憧れている人に見られがち(笑)」

最近では少し小さなフレームの一本に落ち着いたそうだ。

「偶然、何でもない街の眼鏡屋で出会ったもの。このフレーム(1)はかなり太めで大きく見えますが、実は小さいんです。私は顔の幅広さのわりに、少し目が寄っている。コンプレックスでもありましたが、それを眼鏡の大きさでカバーするのではなく、むしろ小さい眼鏡でその目の位置に寄り添うことにしたのです。

いろいろな眼鏡にチャレンジした結果として、“あっ、あの眼鏡の人!”などと言われるようになりました。眼鏡の印象は強いと思いますが、そこまでキャラクター作りを意識しているわけではないんです」

オーソドックスなタイプにスパイスを効かせ、自身のコンプレックスに寄り添うことで、自然と遠山正道には“眼鏡”という一つの特徴が出来上がっているのである。

地方や世界中の街に行った際も、新たな偶然に期待してふらっと眼鏡屋を覗いてみる。
「忘れられたように置かれた眼鏡の中から、好みの一本と出会えると嬉しいものですね」

作法】

・オーソドックスという守備範囲の中で選ぶ。
・時には大胆にアレンジする。
・コンプレックスは隠さずに、寄り添う。