つるかめ書房(東寺/京都)
大正12(1923)年に建てられた京町家をリノベーションしたら、鶴と亀の置物が見つかった。かつて炭屋と質屋が営まれていたその建物は〈間−MA−〉と名づけられ、母屋はカフェとレストランに、離れの建物は〈つるかめ書房〉へと生まれ変わった。
母屋から庭に面した廊下を渡って敷地の奥に立つ離れへ向かう。鶴と亀の置物と均一本の棚に出迎えられて足を踏み入れれば、正面の平台には雑誌がずらり(80年代のブルータスも発見!)。
片岡義男の単行本&文庫本が勢揃いする棚もあれば、伊丹十三を特集した雑誌も選集とともに並ぶ。金子國義の装画に目を奪われる富士見ロマン文庫、ホルヘ・ルイス・ボルヘスが編む世界文学アンソロジー「バベルの図書館」シリーズが面を見せ、新潮クレスト・ブックス、講談社文芸文庫などを集めたコーナーもそこここに。井伏鱒二の弟子であった小沼丹の横に、内向の世代の作家の一人、後藤明生が続き、壁際の一角には古井由吉が鎮座する。
純文学からライトなエッセイまで、文芸、SF、ミステリー、暮らしにまつわる本に絵本に、ヴィンテージの紙モノに、ラインナップはとにかく多彩だ。
大阪・箕面〈ひなたブック〉の2号店でもあるこのスペースを営む小林誠二さんは、「置いている本は5000冊くらいかな、8割方は僕も読んでいます。珍しい本よりも、自分が読んでいた本、好きな本を中心に揃えました」と言うのだが、実はマニア垂涎のアイテムも少なくない。
2階では現在SF&ミステリーフェアを展開中で、例えばフィリップ・K・ディックならば、80年代のサンリオSF文庫、80〜90年代の創元SF文庫&創元推理文庫、最新のハヤカワ文庫SFまでが揃い踏み。春陽文庫の江戸川乱歩、秋元文庫のジュヴナイルSFなど、絶版本も良心価格で並んでいるため、古本屋がこっそり、ごっそり買い物をしていくことも多いのだとか。
2019年3月の開店から半年余りが経ち、じわじわとファンを増やし続けている〈つるかめ書房〉。
古くて新しい名所として、本好き、本屋好きが京都を目指すべき素敵な理由になるはずだ。