問 tou(東御/長野)
浅間山や北アルプスなど、信州の雄大な山並みが見渡せる〈芸術むら公園〉。豊かな自然に囲まれた市民の憩いの場の一角に、2019年にオープンしたのが〈問 tou〉だ。オーナーの平田はる香さんは、同じ東御市内にある知る人ぞ知る人気店〈パンと日用品の店 わざわざ〉を12年間営んでいる。
「〈わざわざ〉が“日常”を扱う店だとしたら、〈問 tou〉は“非日常”がテーマ。2店舗目を作ることが決まった時に、思いっきり偏った店にしたいと思ったんです」。約3000冊の選書の基準も、ずばり“偏愛”。子供の頃から本の虫だったという自分の“好き”を詰め込んだ。
「選書は、親交のあるバリューブックスの生江秀さん、そしてツバメコーヒーの田中辰幸さんにお願いしました。2人には“誰にも迎合しないでほしい”とだけお願いしました」
その結果、書棚にはロラン・バルトの哲学書から北大路魯山人の料理本、ヒップホップやジャズなどの音楽関連書、さらに「魔術」について記された書籍など、3人の好奇心が絶妙にミックスした個性豊かなタイトルが揃った。
これらの本は中古・新刊に限らず、すべて委託ではなく買い取っているのだという。「“確実にこれは私たちの好きな本です”と言えるものだけを売りたい。そのためには、所有する責任を持つことも必要なんです」。そう語る平田さんは、本屋のあり方そのものをこの場所から問い続けている。