古より京都は新しいものの積み重ねで伝統を育んできた。それはコーヒーシーンでも同様。昨年惜しまれながら119年の歴史にピリオドを打った老舗〈京華堂利保〉跡に登場したのが〈トリバコーヒー 京都〉。2014年東京・銀座に創業した自家焙煎のコーヒー豆専門店〈トリバコーヒー〉の2軒目の店舗だ。
「僕が作りたかったのは誰がどう淹れてもおいしい、家で飲むコーヒーのための豆」と創業者の鳥羽伸博さんは言う。用意したのは5種類のブレンドと自家農園から届くハワイコナ、月替わりの限定ブレンド。
定番中の定番であるマイルドブレンドは、良い部分も悪い部分も味を深く引き出しがちな京都の軟水に合わせて微調整を行い、特別バージョンに仕立てた。あくまでもメインは豆の販売としつつも、くつろげるカフェスペースも併設。
「最初の店では飲んでもらうのはテイスティングのつもりでした。ただコロナ禍を経て、わざわざ来店してくれる方をもてなしたいという気持ちも生まれてきて。次のフェーズに入ったかなと」
京都への出店は予定していたわけではないという。「この建物との出会いが京都に店を作る決め手に。残せる古い部分はなるべくそのままに改装しました」と鳥羽さん。カウンターのショーケース、奥に見える造り付けの棚など、足を運んだことのある人ならかつてのままと懐かしく思う人もいるだろう。京都のコーヒーシーンに、また新たな一ページが加わったと感じさせる一軒だ。