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せきしろが語る〈お食事処 福よし〉のタレカツ丼

あの時食べたこんなとんかつ。作家・せきしろによる味の記憶。

Photo: Kayoko Aoki, Tomo Ishiwatari, Kasane Nogawa, Kunihiro Fukumori, Hiroki Tsuji / Illustration: Naomi Tokuchi / Text: Hikari Torisawa, Yuriko Kobayashi, Koji Okano, Izumi Karashima / Edit: Keiko Kamijo

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お食事処 福よし(北海道・訓子府)

北海道 とんかつ せきしろ
タレカツ丼発祥の店秘伝のたれは醤油ベースのさっぱり味。¥800

私が生まれ育った町の辺りには、なぜかタレカツ丼の文化があった。私は小さい頃からそのタレカツ丼に慣れ親しんでいたために、一般的な卵でとじられたタイプを食べたことがなく、上京して初めて食べたのを覚えている。
私の祖父がこの店でよくお酒を飲んでいて、それについて行ってはこのカツ丼を食べた。塩辛さと甘さのあるタレがカツの薄めの衣の色を濃くし、その下にある白米も香ばしく色付け、それだけでもう美味い。カツの上に乗せられたグリーンピースが鮮やかで美しく、ハッとしたものだ。

よく食べていたのはもう30年以上も前。店もカツ丼もまだあり、いまだ食べたくて仕方ない。私も歳をとり、この状態が奇跡と言っても過言ではないことを知っている。

このカツ丼は、帰る理由となる味なのだ。

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