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“カワイイ”だけじゃない『My Melody & Kuromi』の世界。見里朝希監督がつくる、緻密で壮大なストップモーションアニメ

Netflixで配信中のストップモーションアニメ『My Melody & Kuromi』が話題だ。その監督を務める見里朝希さんに話を聞くことができた。

photo: Haruka Watarai / text: Tomoka Hara

Netflixで配信中のストップモーションアニメ『My Melody & Kuromi』が配信初週、非英語シリーズ部門で世界2位を記録する快挙を成し遂げた。その監督を務めるのが見里朝希。『PUI PUI モルカー』(2021年)の大ヒットでも知られる注目のクリエイターだ。

「世界で愛されているアニメ作品たちのようにアクションも本格的に取り入れて、ストップモーションの限界を超えた作品を作りたいと思っていた」と当初から世界を視野に入れていた見里は、反響に手応えを感じている。未見の視聴者に向けて、改めて緻密で壮大な制作過程を訊(き)いた。

ストップモーションにはまだまだ可能性がある

マリーランドで人気のケーキ店を営むマイメロディ。一方クロミの和菓子屋は一向に客が来ない。そんな中スイーツコンテストの開催を知ったクロミは一発逆転を目論み……。

『My Melody & Kuromi』は、コマ撮りで人形を動かしていくストップモーションという撮影技法を用いて作られた。「事前に制作したイメージボードを頼りに撮影方法などを細かくスタッフと共有しながら進めていくため、一日に4秒分の撮影ができれば順調といわれる世界です。でもその分、細部に手作りの温かみが生まれるのが魅力」と見里監督は語る。

注目すべきはそんなストップモーションの枠を超えた大胆な動きの演出。空を駆け巡り戦ったり、カーチェイスシーンまで!天衣無縫な動きが作品の世界を広げていく。

さらに監督がこだわったのがキャラクターたちの持つ動物らしさだ。「感情を入れすぎると人間味が出てしまって、動物モチーフのキャラクターならではの良さが薄れてしまう。『PUI PUI モルカー』もモルモットらしさにこだわったので、その経験が生きましたね」

見たことのない画角と演出で表現される、“カワイイ”だけじゃない世界

デビュー作以後、ホラー・ダークな世界観の評価も高い見里。「恐怖って、受け手にとって未知なもの、好奇心をくすぐるもの。その未知の中身が判明した時の気持ち良さは、視聴者を引きつけると感じています」。

ティム・バートン作品にも影響を受けたという見里の持ち味に、脚本の根本宗子のテイストも加わり、本作も平和な世界を徐々に侵食していくダークな空気が秀逸に表現されている。

承認欲求や流行に踊らされ物事を消費する群集心理など、現代社会のリアルを描く側面も。

「アクションシーンには『ワイルド・スピード』など名作へのオマージュも入れていて。“『カワイイ』には縁がない”と思っている方にも楽しんでもらえる自信があります」

Netflixシリーズ『My Melody & Kuromi』
原作:サンリオ/監督:見里朝希/脚本:根本宗子/制作:TORUKU from WIT STUDIO/マイメロディとクロミの絆を通して人の心に渦巻く欲望、優しさの意味などを描く。Netflixにて世界独占配信中。