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家具ありきで店を作った〈トム ブラウン〉の東京・青山店

トム・ブラウンの店でアンティーク家具が買えることを知っている人は意外に少ない。レアなミッドセンチュリー家具を豊富に収集する彼が、魅力とこだわりを解説してくれた。

Photo: Nagahide Takano / Edit: Shigeo Kanno / Coordination: Yumiko Sakuma

店作りのルールについて

私にとって大切なのは、自分のアイデンティティに忠実でいることです。ショップで使う色のトーンはスペースを見る前から決めていました。家具は、グレーかダークブラウンのようなニュートラルな色。これらは、私が作る服にもよく登場する色です。

NYの店と同じで青山店もすべて私が選んだ家具で構成されています。90%はイメージ通りに配置できたんですが、残りは、直感的に変えました。ちなみに、店内の白いブラインドはNYの店と同じスラット幅(3.4㎝)。それがかつてミッドセンチュリー時代のオフィスで使われていたサイズだから。
トイレは、ロッカールームのイメージで、白のサブウェイタイルを。タオルはリネン素材の白しか使いません。

メゾン・ジャンセンのシェルフ
MAISON JANSEN:Etagere/骨董品としても高い価値を誇るメゾン・ジャンセンのシェルフ。素材には、スチールと真鍮を使い、盤面には、黒ガラスを用いている。¥1,784,800

好きなデザイナーについて

主に、ジャック・アドネ(フランス)、ジオ・ポンティ(イタリア)、エドワード・ワームリー(アメリカ)ですね。彼らは、国は違いますが、私の好きなミッドセンチュリー家具デザイナーです。

いくつかは自宅でも使っています。私が彼らの作品を店にディスプレイしているのは、コンチネンタルな雰囲気を出したいからです。ショップイメージは、1950年代、60年代のアメリカのミッドウェストの銀行ですが、具体的な都市はありません。

なぜなら、場所を特定することでつまらなくなる可能性があるからです。私の頭の中にあるミッドウェストは、よりチャーミングなアメリカっぽい感じがします。東海岸はヨーロッパの影響があるし、西海岸だと少しのんびりしすぎている。映画に譬えるなら、ヒッチコックの『北北西に進路を取れ』のイメージが理想的。

集めた家具を売るのはなぜ?

ヴィンテージ家具を探すのは、もちろん大変だけど、それよりも、日本では、アンティーク家具がほとんど存在しないことに驚きました。だからこそ、売り物にすることが、私の店にとっての特別なことだと思うのです。

青山店のような旗艦店のほかに、デパートの店舗もあるので、まだまだ、家具は必要ですね。だから、常にヴィンテージ家具店に足を運んだり、オンラインストアなどでまめにチェックしています。私の店に訪れた時は、ぜひ、家具も見ていってもらいたいですね。