コーヒー関連の会社に勤める父の影響で、幼い頃からコーヒーに親しんできた出井さん。彼が芸人としての飛躍を求めて大阪から東京へ拠点を移したのは2014年のこと。この上京がコーヒー好きにも拍車をかけた。
「“味”にこだわるようになったのは東京に来てから。以前は苦くて丸みのある深煎りが好きだったんですが、〈COUNTERPART COFFEE GALLERY〉でエチオピアのアラカ ウォッシュドを飲んで、フルーティさとすっきりした酸味に“浅煎りもおいしいんだ”と驚いて。世界が広がりました。当時は節約のために移動に自転車を使っていたので、道中で気になる店を見つけるとメモしていました」
以来深煎り、浅煎りどちらも楽しむ“博愛の精神”でコーヒー店の開拓を続けてきた。
「店構えに哲学や本気度が滲(にじ)み出るお店に惹かれますね。例えばここ〈swamp〉は西新宿ナルゲキという劇場の裏にあって、出番の前に訪れたのが最初です。グラインダーが3台もあるところに気合が垣間見えるし、もちろん味も間違いない。時々お邪魔しています」
今や三大欲求に匹敵するほどの“コーヒー欲”を携える出井さん。売れっ子となった今も、合間を縫ってコーヒー店へと繰り出す。
「最高級の豆を扱う攻めた専門店から老舗まで、コンパクトな範囲内にいくつも名店が点在する点は東京ならでは。僕は1時間空けば、タクシーを使ってでもコーヒーを飲みに行きます。自転車を使わなくなった分、体が丸みを帯びてきちゃいましたけど(笑)。コーヒーを満喫するのにこれ以上の街はないですね」
swamp(西新宿)
浅煎り

2022年8月にオープン。エチオピアのウォッシュドやナチュラルを筆頭に常時8種類の豆を取り揃え、抽出方法に応じて〈マルケニッヒ〉の3台のグラインダーを使い分ける。店主の石川篤希さんセレクトによるジャズやブルースのBGMも魅力。1杯600円~。豆100g 1,150円~。
Acid Coffee Tokyo(代々木上原)
浅煎り

ラボのような空間に、“スーパーフルーティ”を標榜する30種類以上の豆が並ぶ。それぞれのコーヒーカードには風味に着想を得た色があてがわれており、産地や品種はもちろん、色を起点にしたり豆の香りを嗅いだりしながら、自ら選ぶ楽しさを体感できる。1杯480円~。豆100g 1,600円~。
COUNTERPART COFFEE GALLERY(西新宿五丁目)
浅煎り

神保町の名店〈GLITCH COFFEE & ROASTERS〉の豆を中心に、トレーサビリティの確かな3種類~を揃える。エチオピアのウォッシュドなどの定番の豆のほか、桃や烏龍茶のようなフレーバーの中国・YUAN YI YUAN農園の豆なども。1杯1,000円~。豆100g 2,200円~。
Definitive. Kichijoji(吉祥寺)
浅煎り

世界最高峰のパナマコーヒーに特化。2024年11月にオープン。農園ごとの個性が際立つパナマ産豆の中でもスーパーロットのみを扱い、品評会で落札したものを含む15~20種類が揃う。風味を引き立たせるためホットもアイスもグラスで提供される。1杯1,500円~。豆85g 5,000円~。
G☆P COFFEE ROASTER(初台)
深煎り

常時8~10種類の自家焙煎豆が揃う。焙煎には直火焙煎機「Fuji Royal103」を使用し、エグ味や雑味を抑えほのかな甘味を擁する風味を追求。ペーパードリップのほか豆の個性が引き立つネルドリップも選択することができる。有田焼・源右衛門窯のカップで提供される。1杯594円~。豆100g 1,080円~。
筋金珈琲焙煎所(下北沢)
深煎り

元はコーヒーが苦手だったという店主の古市敦さんが2004年にオープンした深煎り豆専門店。コーヒーの旨味を徹底的に引き出すため、最高品質の豆を丁寧に焙煎し、持ち帰りコーヒーは1杯につき30gの豆を5分以上かけて抽出。カルピスバターを使ったチーズケーキも人気。1杯648円。豆200g 1,836円~。
珈琲道場 侍(亀戸)
深煎り

1978年創業。8時間かけて抽出するダッチコーヒー(水出し)やブレンドのほか、スペシャルティを含む10種類ほどのストレートコーヒーが揃う。マスターの近藤孝之さんと2代目の孝太郎さんが旅先で見つけた多彩なカップ&ソーサーも魅力。1杯600円~。豆100g 800円〜。
cafe Bach(南千住)
深煎り

日本コーヒー界のパイオニア・田口護さんが1968年に創業。現在は総店長の田口康一さんが店を切り盛りし、オリジナルの焙煎機で煎りたての豆を提供。シグネチャーとなる中深煎りのバッハブレンドのみならず、豆の個性に応じて浅煎りから深煎りまで揃う。1杯680円~。豆100g 880円~。
