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暗渠愛好家が選ぶ、「水のエビデンス」を味わう新しい景色6選

この街とそこに息づくもの、こと、場所を愛してやまない人たちがいる。飲食をはじめカルチャーやエンタメ、さらに建築や公共物に都市の風景まで、マニアが極私的に案内する東京偏愛スポット。

text: ankyo-maniacs / edit: Mo-Green

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「水のエビデンス」を味わう新しい景色

暗渠(あんきょ)とは、もともと川や水路だった水の流れを地下に移したもののことだ。ここでは少々広く解釈し、単なる川跡・水路跡まで含めて暗渠と呼ぼう。東京はちょっと前まで自然河川や用水路が方々に流れる水の豊かな街だった。震災・戦災からの復興や高度経済成長などの「都市化」と引き換えに、その水面の多くは消えていったのだ。

しかし目を凝らせばそれらのエビデンスはあちらこちらで見ることができ、東京は今や暗渠の街であるとわかる。暗渠は元川だっただけに、歩道が変に広かったりやたら狭かったり妙にくねくねしていたり、車止めに囲まれていたりと小さな違和感を抱えているところが多く、時として異世界への入口のようでもある。街の日常からちょっとだけはみ出す感覚。それが暗渠の魅力でもある。また、暗渠ではかつての水辺の痕跡も見つけられる。

例えば「橋」だ。水の流れもない街角に唐突に置かれている橋。たぶん通る人のほとんどが見過ごしている橋。その橋こそ、そこに川があった証拠である。欄干ごと残っている橋を見つければもちろん嬉しいが、それが親柱だけ、いや橋名板だけであっても、なんなら橋の名が交差点に残っているのに気づくだけでも萌えてくる、気分はまるで宝探し。そんな宝物が都内のあちこちに隠れているのだ。そこにかつて水の流れがあったことを知ると、いつもの街の景色がちょっと違って見えてくる。そんな自分の中の小さな変化も、暗渠で楽しんでみよう。

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