この1〜2年でも変化を続ける芸術都市
数多くの個性豊かな美術館やギャラリーが集まり、街中を歩くだけでもさまざまなパブリックアートと出会えるアジア随一のアートの街。そんな東京の近年のアートシーンについて、ウェブ版『美術手帖』で編集長を務める橋爪勇介さんに教えてもらった。
「〈三菱一号館美術館〉のリニューアル、そして日本初上陸のギャラリー〈ペース 東京〉ができたのもインパクトがある話題でした。昨年誕生した、現代アートのコレクターによる美術館〈ウエシマ ミュージアム〉も面白いですね。また、エキシビションスペースが設けられた〈ジル サンダー〉の新店舗は、展示作品と内装、プロダクトが調和していて、アートスペースを設けるラグジュアリーブランドの中でも特にアートへの敬意を感じました」
目が離せないアートスポットが続々と誕生している東京だが、その流れの中に都市の大規模開発もある。
「特にここ1、2年印象深い〈麻布台ヒルズ〉や〈トダ ビルディング〉の大規模開発は、その初期段階からアートが完全に織り込まれているのが特徴です。プライベートセクターでアートに正面から取り組んでいくという形が、デベロッパーを主体に生まれてきています」
例えば、〈トダ ビルディング〉では、エントランスロビーを新進アーティストの作品発表の場としてパブリックアートを展開するプロジェクトを実施している。
「芸術作品を目的としていない人たちにも接点が生まれるのが、パブリックアートの良い点だと思います。それが場所の付加価値にもなるのではないでしょうか」
三菱一号館美術館(丸の内)
RENEWAL 2024年11月

ジョサイア・コンドルにより設計され、1894年に竣工した建物を復元し、2010年に開館した美術館。注目は昨年のリニューアル時にできた小展示室。館の活動の根幹となる収蔵作品を主軸に小企画展を開催。5月11日までは『江戸から東京へ』が開催中(料金は企画展に含む)。
Pace 東京(麻布台)
OPEN 2024年9月

1960年にアメリカ・ボストンで誕生したギャラリーの、世界8都市にある拠点のうちの一つ。建築家・藤本壮介が手がけた内装も見どころ。日本であまり紹介されてこなかった作家の作品も並ぶ。5月6日までサム・ギリアム展が開催中。
UESHIMA MUSEUM(渋谷)
OPEN 2024年6月

事業家・植島幹九郎が2022年からコレクションする現代アートの展示を行う美術館。地下1階~地上5階の6フロアにオラファー・エリアソンや池田亮司ら、世界中の旬な作家の作品が揃う。アートシーンのトレンドをキャッチアップするならここへ。
JIL SANDER 銀座(銀座)
OPEN 2024年11月

世界最大規模の旗艦店。アートのためのエキシビションスペースには、イギリスの彫刻家、レイチェル・ホワイトリードの作品を常設。トラバーチンなど天然素材を駆使した、世界的建築事務所〈カスパー・ミュラー・クニアー・アーキテクツ〉による内装との見事な調和が美しい。
麻布台ヒルズ(麻布台)
OPEN 2023年11月


商業施設や住居、オフィスなどが複合する“コンパクトシティ”。複数のギャラリーや、オラファー・エリアソン、奈良美智のパブリックアートも。
TODA BUILDING(京橋)
OPEN 2024年11月


芸術文化施設が融合したオフィスビル。日本を代表するギャラリーが集まる。エントランスには、国内外で活躍するキュレーター監修のパブリックアートも。現在は持田敦子をはじめ4名の作品を展示。