パンを愛してやまないあの人へ
気鋭パン職人による心和むサンドイッチ
〈埜屋〉のサンドイッチ
奥・別名「noyaの基本サンド」。卵は食感を残すよう手で潰し、ハムサンドは「温市」のレタスをたっぷり。手前·沖縄県産豚の脂身もうまいロースカツを信州産小麦全粒粉「ゆめあさひ」のカンパーニュで挟んだカツサンド。食べ応えあり。 
バインミーもたくまたまえさんのレシピ。パンは石臼で製粉した玄米粉をブレンドし、サクッ＆パリの食感。信州産小麦はすべて上田市「なつみ農園」で有機栽培されたもの。 
左から時計回りに、カツサンド715円、バインミー660円、ハムレタスたまごサンド638円。できるだけゴミを減らすため、今後は包装はシンプルなラップをメインに。
パンマニアを魅了するだけでなく、シェフや醸造家など造り手からの信頼も厚いパン職人・木村昌之さん。「ルヴァン」などを経て吉祥寺「ダンディゾン」のシェフを長年務め、現在は長野県上田市で卸しと定期便専門のパン工房「木村製パン」を営む。
そんな木村さんの東京で唯一となる店舗が2024年2月、虎ノ門にオープンした。店名は「埜屋（noya）」、場所はなんとグルメスーパー「福島屋」内。スーパーの小さな厨房で、信州産小麦を石臼で全粒粉に挽くところから始め、ハード系パンからヴィエノワズリーまでぐんぐん焼き上げる。
中でも「埜屋」の主軸であり、木村さん自身初の挑戦となったのがサンドイッチ。たまちゃんこと料理家のたくまたまえさんが具材のレシピを監修。
たとえば定番の「ハムレタスとたまごサンド」なら、平飼い卵を〈福島屋〉自家製マヨネーズと和えて食感を残すよう手で潰し、平塚〈ピュアファーム〉の無添加ハムに新鮮レタスを山ほど合わせ、信州産小麦全粒粉のパンドミで挟む。ほかにリンゴ酢を使った優しい酸味のなますがギッシリ詰まったバインミーなどなど。
〈福島屋〉も取り扱う「温市（ぬくもりいち）」の有機野菜をはじめ、調味料など隅々まで作り手の分かる良質な素材を使用。クオリティは超高いが洗練され過ぎず、どこか素朴な手作り感を残す。その塩梅が絶妙で、これを東京のど真ん中、虎ノ門で食べられるのがすごいのだ。
「虎ノ門で働く人たちに思いっきり野菜を食べてほしかったんです。そして最後に“このパンおいしいな”と気付いてくれたら」と木村さん。
確かに、卵サラダやなますの滋味にしみじみしながら、やがて噛むほどに小麦の香りがあふれ出て、最後はパンのおいしさに唸る。
噂を聞きつけ、既にお昼どきには完売する人気に。こんなサンドイッチこそ、野菜を欲するビジネスパーソンたちにぜひ贈りたい。