スイーツを愛するあの人へ
豊かな風味に酔いしれる仏郷土菓子「フラン」
〈パケモンテ〉のフラン・パティシエ
2024年2月、代々木公園の小径の奥にオープンした、フランスの伝統菓子「フラン・パティシエ」の専門店。この「フラン・パティシエ」とは卵と牛乳などで作るフラン液をパイやタルト生地に流し込んで焼き上げたもの。無添加を信条に独自の手法で焼き上げ、「パケモンテ」と呼ばれるフランスの伝統的なラッピング法で包んでくれる。
定番のバニラは、無添加飼料にこだわる長崎の養鶏場から届く健やかな卵とバニラビーンズを鞘ごと使用し、香りも味わいも驚くほど濃密。多層を成す筒状のパイ生地はザクザクパリパリと心地よく弾け、芳醇なバターの香りが口中を満たす。このパイ生地とプル&トロなフランの限りなくリッチな共演ときたら……!
人気の高さゆえ、春から定番となった「チョコレート」は、東京発のクラフトチョコレートの代表格〈Minimal〉のカカオ68%のチョコレートを使用。口に含むとカカオのゴージャスなビター感とフレッシュな果実味があふれ、思わず陶然となる。
三角錐の形に包んだパッケージデザインも秀逸で、これはオーナーの鈴江恵子さんがパリで生活していた際に気になっていた包装を再現したのだとか。広げると中から銀色のトレイに載ったフラン・パティシエが現れ、包装紙はランチョンマットがわりになる。パイ生地を盛大に散らかして食べるのが、また楽しいのだ。
シェフパティシエの本田珠美さんが作る味わいは、限りなくリッチで上質。だけど“おてんば”な感じと言うべきか、洗練されすぎずどこか素朴さを残しているのが心憎い。コーヒーもいいけれど、良質な素材のみで作られた大人の味わいはお酒にもピタリと合う。
かつて酔ったお父さんが家族に買って帰った寿司折のように、紐をつまんで「おみやげだよ~」と手渡したくなってしまう。ギフトとしても優秀なニューフェイスだ。