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【今日のギフト】佇まいも美しい神田の銘菓。〈御菓子処 さゝま〉の松葉最中

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photo: Shu Yamamoto / text & edit: Yoko Fujimori

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和菓子を愛するあの人へ
神保町で90余年愛されるひとくち最中

〈御菓子処 さゝま〉の松葉最中

神田駿河台下で、昭和6(1931)年より店を営む老舗和菓子店〈御菓子処 さゝま〉。神保町駅から徒歩2分、季節ごとに掛け替えられる暖簾やきれいに掃き清められた三和土など、変わらぬ店の佇まいが書店街に風情をもたらしている。

茶会で出す季節の上生菓子の名店として知られるが、創業以来、貴重な通年商品として手みやげに愛されているのが「松葉最中」。一辺が4.5㎝ほどの小ぶりなサイズで、中央に松葉があしらわれたなんとも品のあるひとくち最中だ。

少し丸みを帯びた四角形は、実は三味線の「胴」を表現したもの。端唄の一派「うた沢」を学んだ初代が唄に欠かせない三味線にちなんで考案し、松葉は初代が習っていた流派の紋なのだとか。

軽めの焼き具合で色白に仕上げた最中種(皮)も特徴で、サクッと小気味いい歯ざわりとともに香ばしい皮の香りが口中を満たす。北海道産えりも小豆で作るこし餡は、ねっとりと濃密でいて重たさがなく、後味はスーッと清らかに消えていく。2、3口でお行儀よく食べ切れるので、ご進物はもちろん茶席菓子として重宝されるのも納得だ。

最中の佇まいも、「四君子」を描いた包装紙のデザインも創業時のまま。「長く通ってくれているお客さんが多いから、“なるべく変えない”ことを大事にしています」とは、二代目当主・笹間芳彦さん。時代が移っても色褪せることのない味わいと美しさ。90余年大切に受け継がれる、神田の銘菓だ。

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