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振付演出家・竹中夏海が“アイドルによるコントバトル”に込めた彼女たちへのエールとは?

振付演出家として数多くの楽曲を手がけてきた一方、近年は裏方ならではの立場から、女性アイドルの心身の健康被害へ警鐘を鳴らす発信も続けている竹中夏海さん。そんな彼女が今回仕掛ける“アイドルによるコントバトル”とは?

photo: Hiyori Korenaga / text: BRUTUS

彼女たちには今、コントが必要だ

「アイドル業界の裏方として感じてきた思いをよりダイレクトに形にするために“歌劇団を作ろう”って思ったんです」。竹中夏海さんの面持ちは真剣だ。

振付演出家として数多くの楽曲を手がけてきた一方、近年は裏方ならではの立場から、女性アイドルの心身の健康被害へ警鐘を鳴らす発信も続けている。

そんな竹中さんが今回仕掛けるのが“アイドルによるコントバトル”。過去、審査員として参加した『おもカワ〜アイドル大喜利選手権〜』のスピンオフイベントの企画・プロデュースを務める。

「『おもカワ』は笑いの“面白さ”だけじゃなく“かわいさ”で勝利を摑(つか)むこともできる、そこが新感覚なんです。アイドルって、握手会の列の長さや動画の再生数のような数字の評価に常にさらされるけど、それが“あなたの価値”に直結するわけではないというメッセージを感じられるというか。面白さとかわいさが同等に扱われていることで出演者たちが自らの魅力を発揮する。コントバージョンでもそこを体現できたら」。

振り付けを依頼された楽曲のテーマと自分の心情が一致しない時でも振りを付けなくてはいけないことを「どこか受け身に感じることもあった」と語る。

「作り手としてだけでなくいちアイドルファンとしても、この業界にトキシックな面があることはずっと引っかかっていて。真正面からアンチテーゼを提示するわけではないけど、この葛藤を、歌・ダンス・物語で構成する“歌劇団”というクリエイティブで表現できるんじゃないかと」。

その壮大な目標の第一歩として、本イベントでは演出などにも携わる。

「ただ、お客さんにはあくまで普通にイベントを楽しんでもらいたい。おバカな中のふとした瞬間に、アイドルの人権について考えるきっかけに触れられる、自分の活動の役割はそこなんじゃないかと思うんです」