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老舗と町家、京都のコーヒー喫茶で憩う。〈はなふさ イースト店〉、〈IWASHI COFFEE〉

コーヒー消費量が常に上位の京都市は、老舗喫茶といまどきの専門店が共存する、コーヒー党にはたまらない町。その中から、昭和な空間や町家の景色に、古都らしさを感じつつ、琥珀色の一杯を嗜(たしな)めるコーヒー店を厳選した。

本記事は、BRUTUS「京都の余白。」(2025年10月1日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

photo: Kiyoshi Nishioka / text: Yuko Saito

はなふさ イースト店(蹴上)

喫茶店全盛期の景色が残る、京都最古のサイフォン店

コーヒーといえば、サイフォン式。カウンターでは蝶ネクタイをしたマスターが、黙々とサイフォンを操り、琥珀色の液体が上へ、下へ。ホールには、新聞片手にいつものブレンドで一服する常連らしき客の姿。そんな70~80年代に主流だった喫茶店の景色がある。

創業は1955年。東京で学んだ初代が、京都で最初にサイフォン式を始めた。現在は2代目の山本一夫さんが自宅のそばで自家焙煎。独特の抽出法を継いでいる。

一度ロートに沸き上がったコーヒーが、下のフラスコに落ち始めるや、再び加熱して沸き上げ、どっしりと濃厚な味わいに仕上げるのがはなふさ流。良き相棒である自家製チーズケーキも40年以上続くロングセラーだ。

サントスブレンド600円。レアタイプチーズケーキはブルーベリーソースが付いて430円。

IWASHI COFFEE(円町)

閑静な西陣の京町家で、穏やかなシングルオリジンを

インバウンドとは無縁の、まっこと静かな西陣の住宅街に、店はある。白壁の引き戸を開けると、和洋が同居したゆったりとした空間が広がる。手前にはテーブル席と焙煎機、奥には町家の面影を残した広い座敷と裏庭が見える。店主は、飲食店などにも豆を卸している真下(ましも)裕也さん。

焙煎所を探していたところ、この古い町家に出会い、自ら改装し、2020年にカフェとしてオープンした。塾の講師から転身、地元・京都でコーヒー屋を始めて15年ほど。今も変わらず、店内にある小型の直火式焙煎機で、毎朝焙煎。「雑味がない、穏やかな味わい」のシングルオリジンをハンドドリップで丁寧に淹れる。そのコーヒーが落ちる音も、ここでは心地よいBGMだ。

本日のコーヒーから、中深煎りブラジル500円。〈Sasha〉のパウンドケーキ500円。

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