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かつて、装丁家たちが文化のハブだった。虎ノ門にオープンした古書店〈TIGER MOUNTAIN〉ってどんな店?

横尾忠則、杉浦康平、平野甲賀、田中一光……。60〜70年代を中心に、日本の古書を装丁家ごとに並べたユニークな古書店兼ギャラリー〈TIGER MOUNTAIN〉が東京・虎ノ門にオープン。

photo: Kazufumi Shimoyashiki / text: BRUTUS

運営するのは〈黒鳥社〉を主宰する編集者の若林恵さんだ。

「戦後の日本というのは本当に特殊な文化空間で、どの分野にも突出した才能が山ほど存在した。今よりも分業が進んでいなかったので、音楽家も作家も芸術家もみな様々な活動をしていた。当時、そうしたジャンルを超えた才能の交流のハブとなっていたのがデザイナーだったんです。デザイナーごとに界隈が存在する。だから、出版社や著者ではなく、装丁家ごとに本を辿ることで、見えてくる文脈がある」

土地柄、外国人客も想定して、店内のポップには英語の説明が併記されている。

「例えばアジア諸国からは、行政のレベルでも当時の日本の文化に関心が寄せられていると感じますので、そうした需要も引き出せるといいなと。でももっと単純に、昔の何でもないような文庫本のカバーを眺めて、やっぱりめちゃめちゃカッコいいよねって語りながら酒飲みたい、みたいなノリもあって。音楽もかけたいし、オールナイト営業も面白いかもしれないですね」

有吉佐和子『非色』(装丁/中林洋子)、平田オリザ『十六歳のオリザの未だかつてためしのない勇気が到達した最後の点と、到達しえた極限とを明らかにして、上々の首尾にいたった世界一周自転車旅行の冒険をしるす本』(装丁/杉浦康平)、開高健『片隅の迷路』(装丁/石岡瑛子)、『リルケ全集7 マルテの手記』(装丁/真鍋博)、椎名誠『さらば国分寺書店のオババ』(装丁/田中一光)
若林さんが選んだ5冊。1点限りのため売り切れの可能性アリ。「書店はメディアでもある。店になければネットで買ってもいいから」と若林さん。左から有吉佐和子『非色』(装丁/中林洋子)、平田オリザ『十六歳のオリザの未だかつてためしのない勇気が到達した最後の点と、到達しえた極限とを明らかにして、上々の首尾にいたった世界一周自転車旅行の冒険をしるす本』(装丁/杉浦康平)、開高健『片隅の迷路』(装丁/石岡瑛子)、『リルケ全集7 マルテの手記』(装丁/真鍋博)、椎名誠『さらば国分寺書店のオババ』(装丁/田中一光)。