鉱物の内側に広がる、インクルージョン・マイクロフォトの世界

photo: Lucas Fassari (inclusion), Aya Muto (portrait) / text: Aya Muto / edit: Shogo Kawabata / special thanks: Yusuke Uchida

鉱物の内側に広がる、液体や結晶が作る艶やかな世界。インクルージョンと呼ばれる内包物を、顕微鏡を駆使して撮影する宝石鑑定士を取材!彼が映し出す、芸術的な作品の一部も紹介。

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Negative Crystals in Quartz

Goethite Spray in Quartz

Petroleum Fluorescing under UV radiation, in Quartz

「もともと数学好きだったんですが、正十二面体のガーネットの結晶を見たときに“こんな幾何学的なフォルムを自然が作り出すのか”と感銘を受けたんです」と、ジェムストーンとの出会いをルーカス・ファサーリは振り返る。大学卒業後に進学したGIA(Gemological Institute of America)で推奨書籍であった『PHOTOATLAS of Inclusions in Gemstones』(E. J. Gübelin、J. I. Koivula共著)で見た石の中の風景に、特に夢中になったという。「重しになるくらいの分厚い研究書でしたが、3巻とも手に入れ、隅から隅まで読破しました」

宝石はそれぞれ生成過程で地質学的環境の影響を受ける。顕微鏡を使って石の中に含有されるガスなどの気泡や液体、空洞、さらには別の鉱物の結晶などの「インクルージョン(侵入物)」を検証し、それがジェムストーンかどうかを鑑定するのだが、そのサイエンスの部分をアートとして見せることができるのではと、ある日ルーカスは思い立つ。そして3年の試行錯誤の末、今の顕微鏡カメラのセットアップに辿り着いた。撮影の際には暗室のように自然光をシャットアウトし、様々な光源を使って石の中の世界を探求する。

ルーカスが特に好きなのはクォーツ。決まり切ったインクルージョンしか見られない石と違って、まだまだ新発見も多いという。「顕微鏡を覗くたびに違う風景が見えて、撮り方だって無限大です」。パートナーと組み、クォーツに特化したインクルージョンの書籍の執筆に取り組んでいるというから、彼の今後の動向が楽しみである。