1.どこまでがシナリオ?どこからがアドリブ?
『犯罪都市』シリーズから次々と生まれる名セリフ。脚本の会議では、主演でプロデュースも手がけるマ・ドンソクがシナリオのすべてを実際に演じて、スタッフに見せてくれるのだとか。あまりに面白くて椅子から転げ落ちるスタッフも出るという。実際に体を動かしながら練られていくアクションとコミカルなシーン。
最新作でリキ役を演じた青木崇高も、韓国映画の撮影現場のフレキシブルさに、当初は驚いたと語っている。「1シーンを撮るごとにその場で編集するんですが、スタッフが集まってきて、セリフやアクション、カメラワークやライティングなど、その場でチェックするんです。その場で話し合って変更することもザラで、チームワーク感がすごいんです」。名セリフや名場面が、撮影現場で生まれることもあるのだ。
2.実話をもとに作られたストーリー
韓国メディアのインタビューによると、主人公マ・ソクトには実在のモデルがいるという。今では、マ・ドンソクと兄弟のように仲が良いというユン・ソクホ警部補だ。ストーリー作りに関しても、ユン警部補をはじめとした刑事に実際に会って話を聞き、50件以上の事件やその背景に触れ、アクション映画として可能な素材を選別。その結果『犯罪都市』は8つの物語になった。映画公開後に出演した韓国テレビのトーク番組の中でユン警部補は、『犯罪都市』の1作目は、80%が実話だと語っているのも、ある意味衝撃的。
3.マ・ドンソクのキャスティング術と名脇役
キャスティングも、主演であり、プロデューサーでもあるマ・ドンソク流。今作の汚職刑事チュ・ソンチョルを演じたイ・ジュニョクは直接電話を受けた一人。本人はインタビューで「『犯罪都市3』を作るのだけれど、悪役をやらないか?とマ先輩が連絡をくださった。映画『神と共に』で少しお会いしただけなのに、その時にいい印象を持っていてくださったようで。電話を頂いたのが、ちょうど自分が役者の仕事に悩んでいた時で、とてもありがたかった」と語っている。
シリーズを彩るシーンスティラーたちも面白い。チョロン役のコ・ギュピルはドラマ『元カレは天才詐欺師〜38師機動隊〜」や映画『ザ・ソウルメイト』で共演。ソウル広域捜査隊キム・マンジェを演じるキム・ミンジェは、映画『無双の鉄拳』『スタートアップ!』で、やはりマ・ドンソクと共演をしている。
また、振り返ると『犯罪都市』で黒龍組の幹部ウィ・ソンラクを演じたチン・ソンギュは映画『グッド・バッド・ウィアード』でマ・ドンソクと共演。『犯罪都市』で2017年の青龍映画祭最優秀助演男優賞を受賞した。毒蛇組のボスを演じたホ・ソンテ(のちに『イカゲーム』で大ブレイク)や、強力班パク・ヒョンシクを演じたホン・ギジュンも出演していたというのが興味深い。
『犯罪都市』ナンバー1シーンスティラー、チャン・イスを演じたパク・ジファンは近年ドラマ『私たちのブルース』やNetflixシリーズ『京城クリーチャー』などにも出演。今も大活躍を続けている。
マ・ドンソクは自らが関わるキャスティングについて、次のように語っている。「毎回1,000人以上の俳優とオーディションで会う。リアリティが重要ではあるが、映画界に新しい顔がもっと出てきてほしいという思いもある。だから、チン・ソンギュやパク・ジファンが自分の役をうまく演じ、それぞれに光を見ることができたことはとてもありがたかった」。
4.本物のアクション
高校時代、アメリカに渡った後にもアルバイト中に同じ肩を痛め、2回の手術を受けることとなったマ・ドンソク。怪我によってボクシング選手への夢は絶たれたが、韓国に戻り俳優となった現在まで休むことなくジムを訪れ、スパーリングをしながら日々アクションのトレーニングに励んでいる。BRUTUSが行ったインタビューの間、何度もマ・ドンソクの口から出てきた「本物」という言葉。スピードがさらに強化され、重量感のある本物のアクションを堪能できる今作『犯罪都市 NO WAY OUT』の裏には、難しく危険なアクションシーンを、最大限に安全に行うための役者、スタッフのたゆまぬ努力がある。
5.「息をしろ!息!」。過去作とつながる名場面
本作でなんだか目の離せないのは中古車ディーラーのチョロン。マ・ソクトとの出会いでパンチを一撃、気を失う。「おい、息をしろ!息!」。マ・ソクトのセリフに既視感。『犯罪都市』の1作目にも登場する「息をしろ!息!」。他にも1作目に登場したガードマンが、今回もマ・ソクトのパンチで派手に倒れている。
他にもシリーズの中には、暗号のように「真実の部屋へ」「まだシングルだ」「金が必要か?5対5で分けるか?」「誰が5だよ」などの名セリフがちりばめられていて、それが作品のアクセントになっている。発言者を変えながら登場することもあるから、観客は気が抜けないのである。過去作とつながる名場面、宝探しのように見つけてみてほしい。
6.みんなの夢をかなえる映画
1作目の監督カン・ユンソンは46歳の時に、『犯罪都市』で長編監督の夢を叶えた。2作目、3作目の監督イ・サンヨンは映画『悪のクロニクル』『エターナル』『犯罪都市』などで助監督を務め、『犯罪都市 THE ROUNDUP』で監督デビューを果たした。2024年韓国で公開を控えているシリーズ4作目『犯罪都市 The Roundup: Punishment』の監督を務めたのはホ・ミョンヘン。『犯罪都市』シリーズで武術監督を務め、マ・ドンソク主演の『バッドランド・ハンターズ』で監督デビューを果たした。刑事物のシリーズ映画を作ることが夢だったマ・ドンソクは、監督たちのデビューという夢を一緒に叶え続けている。
7.チャン・テスもふたたび登場!『犯罪都市4』の予告編が公開
絶賛上映中の『犯罪都市 NO WAY OUT』でも匂わせがあったが、2024年に韓国で公開が決まっている『犯罪都市 The Roundup: Punishment』がすでに完成。先日「第74回ベルリン国際映画祭」に参加したというから、韓国映画のスピード感には驚かされる。予告編も公開となったとなれば、今のうちにこれまでのシリーズを観ていない人は総ざらいして乗り遅れないように準備しておきたい。
次回作の日本での公開を、楽しみに待ちたい。