生きていることを実感し続けるために、絵を描く
人や人形の顔に透明な何かがぺったりと纏わりつき、覆い尽くそうとしている。友沢こたおさんの“スライムシリーズ”と呼ばれる作品は生々しくリアルで、実際に顔を覆ったらどうなるのか、その質感や温度、息苦しさや気持ちよさまで鑑賞者にイメージさせる。友沢さん自身が閉塞感を覚えていたときに実際にスライムをかぶってみた経験、それがスライムシリーズ誕生のきっかけだという。
「知人が家に置いて行ったスライムを、裸になって被ってみたことがあるんですよ。そうしたら、とても気持ちが良かったんです。肌に張り付く生の感覚があって、息苦しく感じている現実世界と一枚隔たりができたようで、“自分”が生きているのを感じられました。そのときの感覚に魅了されて必死で描いた作品が、スライムシリーズのはじまり。でも、これも自分の表現のごく一部でしかない。何事も慣れてしまったら面白くないので、いつも『できないかもしれない』と思うことに挑戦していたいんです」
友沢さんは子供の頃からずっと絵を描いてきた。幼少期は、漫画家の母(友沢ミミヨ)の影響もあり「大人は絵を描くもの」だと思っていたそうで、画家を志したのは自然な流れだったようだ。
「息をするように絵を描いているんです。小さい時から、その感覚は変わっていないと思います。でも何枚作品を作っても、真っ白いキャンパスに向き合うと毎回『どうやって、描いていたんだっけ』とわからなくなってしまって……。描き上げられるのか、いつもめちゃくちゃ怖いんですよ。それが、描き始めると迷いも消えてしまう。自分と絵だけの別の時空が広がっていって、気がついたらできているという感じ。一番自由になれて、生きているのを実感できる時間です」
毎秒感じている挑戦と、表現の挑戦の先にあるもの
“息をするように”と語るように、作品のインスピレーションもあらゆるものから受けている。特に幼少期に見ていたプロレスやホラー映画、中学生で見た『ゆきゆきて、神軍』(原一男監督)など「生々しさを感じるものが好き」だと友沢さんは言う。どうして生々しいものに惹かれるのか、と問うと「魂が踊り出すからですかね」という答えが返ってきた。
「例えば東京の中でも、人間のドラマが見える気がするから私は歌舞伎町が好きなんです。街を歩いていて感情が死んでいるように見える人も、それはそれで生きてるという感じがするんですけどね。私は自分自身の皮膚で感じたことしか信じられない。自分自身が、生(なま)であることを忘れたくないと思っているから、生々しいものを見るのが好きです」
友沢さんは「全部のことを“当たり前じゃない”と思っているから、毎秒毎秒が挑戦ですよ」と語る。「バッティングセンターでも投げられた球を全力で打ち返したり、私の好きなフリスビーをやっているときも、空気を円盤で切ることに集中したり、細かい一秒ずつを際出たせる挑戦を続けています」今年の春に、東京藝術大学大学院を卒業した。卒業制作ではクレイアニメを作ったそうだ。彼女の表現としての挑戦も、スライムシリーズに留まらず多方面に向けて拡がり続けている。
「私にとって絵に関係ないことなんて何もないんです。だから、自分が感じているものを、絵でくまなく表現できるか、というのが挑戦の全て。積極的に海外にも出かけるようにして、視野を広げているところです。作品は展示会の期限などに合わせて、『これで出すぞ』と自分で決めて、発表している。でも、本当は完成することなんてないんですよ。だから絵を発表するというのは、正気になったら恐ろしいことなんです。でももう私は正気ではないので、そんなに怖くはないですね」
心情が装いに素直に現れる彼女が、今身につけたいもの
今回友沢さんが着用した〈TOKYO DESIGN STUDIO New Balance〉のアイテムは機能的で、アクティブに活動を続ける彼女にとてもよく似合っていた。撮影時にもオーバーサイズの私服で登場した友沢さんは今、ナチュラルなファッションを身に纏うのがムードだそうだ。
「シンプルなファッションが好きだけど、頻繁にそのときに身につけたいもののムードが変わるんです。過去にはメイクもしっかりしてカラーコンタクトを入れて、ヒールの厚い靴で武装しているような時期もありました。今は心境が変化して、髪も地毛の色に戻して、生まれてきた自分として地面を踏みしめたい。でもそれも日によって『かわいくなりたい!』という気持ちが勝って、YouTubeでメイク動画を見漁るときもあります。でもいつも変わらないのは、動きやすさを重視しているところですね。だから今日身につけているアイテムは、どれも今の自分に寄り添ってくれるものだと思います」
ファッションも自分を表現するツールとして捉え、その時の心情に素直でいる友沢さん。モードが頻繁に切り替わることからも察せられるように、一つのところに留まるのはあまり得意ではないようだ。
「じっとしていると心を病んでしまうので、毎日ちょっとしたことでも変えていきたいんです。ビー玉みたいに、ころころ転がっていたい。絵を描いているときにも部屋でじっとしているように見えて違う時空にいるような感覚があるし、展示会場に持っていくとまた全然違うもののように感じるからおもしろいですよ。これはハッピーなオプションだと思っているのですが、自分の作品を見て喜んでくれる人がいるのはとても嬉しいです」
友沢さんは、「私にとって絵を描くのは当たり前のことだけど、独りよがりじゃない思いもあるんです」と切り出した。
「世界を変えたい、って思いがあるんですよ。みんなが夢中になって暮らせるように、直接的じゃなくても、自分が夢中で作ったものを届けたいんです。だから人のことは気にしないで、自分と戦っていかないと」
男女の垣根をなくしたジェンダーニュートラルの考えのもと、従来の均一なサイズグレーディングを排除。多様なボディバランスにも対応するウエアを展開。耐久性に優れたコーデュラヘビー裏毛を使用したスウェットパーカをショーツタイプとセットアップでコーディネート。速乾性に加え、耐摩耗性や抗ピリング性も持ち合わせ、繰り返しの使用や洗濯にも型くずれしにくいのが特徴。
ニューバランスジャパン お客様相談室
TEL:0120-85-7120