Live

デザイナー、ディレクター・熊谷彰博の棚。物の関係を探り、感覚を研ぎ澄ます

ある特定の視点でものを蒐集、選別、編集する。そんなキュレーション的な視点で、自宅や事務所に魅力的な棚を作っている人を紹介します。

photo: Masaki Ogawa / text: Hisashi Ikai / edit: Tami Okano

物の関係を探り
感覚を研ぎ澄ます

整然とした美しい棚。順番に眺めていくと、工芸品や古物、金物のパーツ、工業資材や定番の文房具と、その陳列にはまったく脈略がないようにも見える。

「既成の価値観や文脈に頼らずに、佇まいや素材の風合い、手触りを自分の感覚で捉え、レイアウトしてみる。すると、物同士の意外な関連性が見えてくるんです」

そうした関係性を探るための蒐集や陳列を始めて10年余り。不確かなもの、あいまいなものにも人の心を動かす力がある。棚を整理しながら、熊谷彰博さんは実践で自身の感覚を広げてきた。

「ステープラーや定規といった仕事道具も置いています。するとなにげない日常にまで物の組み合わせへの意識が及ぶようになり、空間も心地よく感じられてくる」

熊谷さんにとってこの棚は、物の見方や自分の感覚を見つめ直す鏡であり、新たな視点や思考を探り出すための装置でもある。

ドミノアーキテクツの棚
都内の集合住宅の一室に構えたアトリエの棚。設計はドミノアーキテクツ。幅3.5m、奥行き25㎝の棚板には、中空ポリカーボネート板を使用。