西野大士(〈にしのや〉主宰、NEAT デザイナー)
あなたの秋冬の定番のスタイルを教えてください。
ウールかレザーのコートのインナーに〈パタゴニア〉のアノラック系、さらにタートルネックのカットソー、スラックスにブーツ、ニット帽が定番です。自分は寒がりなので、アウターの中に着込むことで温度を調整するようにしています。トラディショナルな装いで言えば、コートにスラックス、ブーツなのでしょうけれど、自分なりに着こなしたいので、スポーツものやアウトドアものを取り入れるようにしていますね。若い頃と比べて、40代になってからはレザー、カシミヤ、ムートンなど上質なものを取り入れるようになりました。ニューヨークのグランド・セントラル駅で通勤中のサラリーマンがイメージです。
そのスタイルに欠かせない、「あたたかい服」はなんですか?
スウッシュが大きい、古着の〈ナイキ〉のニット帽。地味な色合いになりがちな、秋冬の差し色にちょうどいいんです。
着ると心があたたかくなるような、思い入れのある服はありますか?
30歳頃に奮発して購入した〈エルメス〉のカシミヤセーター。妻の買い物で銀座店を訪れた時に、2時間ぐらい悩んで買いました。当時の自分には、人生最高額の買い物だったので、ドキドキしたのをよく覚えていて、着ると今でもあの感覚を思い出します。
伊藤 翼(〈PITTZZ〉店主)
あなたの秋冬の定番のスタイルを教えてください。
ヴィンテージのテーラードスーツをカジュアルに着崩す。偉人たちのスーツスタイルに影響を受けています。中でもボブ・ディランが履くチェルシーブーツに魅せられ、自分のスタイルには欠かせないアイテムになりました。新しい装いに挑戦することはありますが、根底は変わりません。今は1950年代のアメリカのギャバジン素材のスーツを探しています。古いギャバジンって、実はモダンに見える素材なのです。
そのスタイルに欠かせない、「あたたかい服」はなんですか?
色々なヘビーアウターを着てきた中で、個人的に防寒性最強と思っているのがムートンコートです。ムートンは貴重な素材がゆえに高価で手が出しづらかったりしますが、ヴィンテージなら比較的手が届きやすい。今作るには難しいハイクオリティなものを手頃に楽しめるのはヴィンテージの魅力です。このコートは、古着屋として独立する前に単身ヨーロッパに行った際、冬のマーケットを回っていた時に寒さに耐え切れず、急遽買ったもの。人生初のムートンアイテムで思い入れの強い一着。
着ると心があたたかくなるような、思い入れのある服はありますか?
定期的に海外へ買い付けに行くのですが、現地で買ってきた服や小物にはすべて思い入れがあります。どのアイテムにもそれぞれの物語があるんです。買った土地の空気、匂い、買うまでの道程、現地の人との会話などなど。バイイングトリップで出会ったものの一つ一つに思い入れがあります。自分が古着の買い物をする時は、現地で買い付けに行っている店でしか買わないのがポリシーです。
玉置周啓(ミュージシャン)
あなたの秋冬の定番のスタイルを教えてください。
シャツにスラックスにロングコート。高校の時、指定された通りに制服を着るのが心地よかったんです。カーディガン、ブレザー、コート。重ね着をすればするほど嬉しかった。それに近い服を買っていたら、自然と定番に。
そのスタイルに欠かせない、「あたたかい服」はなんですか?
古着屋で買った〈ラルフローレン〉の黒いロングコート。秋はもっぱらシャツとスラックスの組み合わせが多いのですが、色のあるものばかりなので、冬はその上から羽織るだけでよいベーシックなものを好んでいます。父親がよく〈ラルフ ローレン〉のシャツを着ていて、なんとなく一張羅のイメージがあったんです。このコートに出会った時も、緊張しながら入った古着屋で、馬のマークを見つけて不思議と心が落ち着いたのを覚えています。今着ているものがボロくなったら、古着屋に行ってまた同じようなデザインのコートを買おうかなと思います。
着ると心があたたかくなるような、思い入れのある服はありますか?
〈マッキントッシュ〉のキルティングジャケット。コートなんて夢のまた夢の頃、2000円という破格で売っていたものです。飲み屋でたまたま会ったチェコ人の男性に「なんてイイもん着てるんだ」とはやし立てられて嬉しかった。ただ購入時点で両肘の縫い目が破けて綿が飛び出していたので、それを悟られないように肘を畳んで飲みました。次にアウターを買う機会があれば、〈マッキントッシュ〉のトレンチコートが欲しい。機能性の高さと、高校の制服を彷彿とさせる安心感、グラスゴーという土地への憧憬から、いつか着たいと思っている一着です。