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竹野内豊が映画『イチケイのカラス』で見据える、真実と未来のイメージ

「夢や目標を決めても、必ずしも思い描くようにならなかったことでかえって得るものがたくさんあったかな。ポラロイドカメラからぼんやり絵が浮き上がってくるような過程というか、今は曖昧な感じをむしろ楽しめたらいいなぁと思っているんですよ」51歳を数える俳優・竹野内豊さんが思い描く未来は、言葉にならない淡いイメージ。多様性、複雑さ、善悪の境界も曖昧になる現代社会で真実を掴もうと奔走する裁判官・入間みちおを演じた竹野内さんに、作品の魅力と自身の信じる道を聞いた。

photo: Masanori Kaneshita / text: Chisa Nishinoiri / styling: Rira Shimoda / hair & make: CHIE (HMC Inc.)

情報や人の声ではない世界に意識を向けたい

竹野内豊

「入間みちおは結構楽観的な人に見えますが、でも実際はすごく俯瞰から冷静に物事を見ている人。その二面性をシーンによって表現に差をつけるというか、みちおの見せる一面を変えられるように努めていました」

東京地方裁判所の第1刑事部(通称:イチケイ)の刑事裁判官・入間みちお。ドラマに続き、映画『イチケイのカラス』でも、自由奔放で型破りなみちおを演じた竹野内豊さん。裁判官でありながら自らの足で現場に赴きマイペースに事件を徹底的に検証するみちおの“職権発動”は、ドラマの見どころの一つでもあった。

黒木華さん演じる堅物なエリート裁判官・坂間千鶴をはじめ、イチケイのメンバーがみちおに振り回されながらも真実を掴もうと奔走する爽快リーガルエンターテインメントがスクリーンで復活。岡山県を舞台にドラマか2年後の物語が描かれる今作は、軽妙なタッチのエンターテインメント作品でありながら、善と悪、正義とは何かを観る者に問う骨太なメッセージも込められている。

「作中で、何のために、誰のために仕事をしているかではなくて、“自分の中でよし!と思いたい”というセリフがありますが、その言葉の中にみちおの揺るがない信念が見えて、それが何よりも彼の強みだったり魅力だと思うんです」

しがらみや偏見にとらわれず真実を掴もうと己の道を貫くみちおだが、竹野内さん自身、仕事や人生における指針はあるのだろうか。

「コロナ禍になってから瞬く間に2年が経ちましたけど、社会や人々の思考がこれほどまでに変わるなんて、誰も想像できませんでしたよね。今、ものすごいスピードで時代が移り変わっていく中で、新しいものが次々と現れては消えていく。そんな時代にみんなと同じような列に従っていれば安心なんだと、自分はどう思うのかではなく外側の景色ばかりに目を奪われていると、本質的なことを見失ってしまう気がして。“入間みちお”のように、情報や人の声ではない世界に意識を向けて誇れる自分を模索していきたいと思います」

竹野内豊
シャツ33,000円、スラックス37,400円(AURALEE/オーラリーTEL:03-6427-7141)