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immaの生みの親、守屋貴行に聞く「バーチャル×ファッションの未来」

バーチャルの世界が当たり前になると、自己表現はどう変わるか。日本初のバーチャルヒューマンimmaを生み出した映像プロデューサーの守屋貴行に話を聞いた。

Interview & Text: Keita Tokunaga / Edit: Keiichiro Miyata

自らの姿形を脱ぎ捨てて、仮想空間で自由な表現が始まる。

インスタグラムの中に最高の“ワタシ”を表現する人が増えたように、世の中はバーチャルに移ろいつつある。アバターが主役の仮想空間が仕事のフィールドである、映像プロデューサーの守屋貴行に、バーチャル×ファッションの未来を語ってもらった。

「すでにバーチャルでライブをするアーティストがいるので、世の中にもだいぶ認知されてきました。近日、CGを使える人なら誰でも簡単にバーチャルヒューマンが作れるシステムを、ある企業が一般に公開する予定があります。

ハイクオリティなアバターが、自分で作れるようになったら、バーチャル内で次々に新しい才能を発揮する人が出てきて、面白くなりますよね。一見、地方に暮らす素朴な感じの人なのに、SNS上でバズって、すごいフォロワー数の方っているじゃないですか。

それと同じで、今後、デジタル上だけの衣服やブランドが生まれると、普段着は地味だけどバーチャルだと、すごくファッションセンスが高いなんて人が現れると思います。すでに、ヴィンテージ服のように、90年代に登場した『ファイナルファンタジー』の主人公の服にプレミアがつくなんてケースが出てきました。

これは、新しいファッションの価値観ですよね。同世代のファッションデザイナーから話を聞くと、そもそも洋服は、西洋から伝来したものなので、日本人デザイナーにとってはアウェーのフィールドで勝負しているようなもの、という意見もあります。

それに比べ、バーチャルの世界は日本人が強い。実例として挙げるなら、日本の文化とアニメ、ゲームの世界観を踏襲して、バーチャルヒューマンという姿で表現した“imma”です。

海外の人たちが日本人と聞いて連想する、顔、髪形、アニメっぽさを取り入れました。今ではインスタグラムで33万人のフォロワーがいて、仕事のほとんどが海外からのオファーです。

日本初のバーチャルヒューマンである、imma
日本初のバーチャルヒューマンである、imma。着用する服までCG。

古来、八百万の神という概念がありますが、その考えで言うと、初音ミクや、バーチャルYouTuberのキズナアイといったバーチャルの存在すらも神格化されやすいと思うんです。

実体があるかはどうであれ、人が信じるものが、真実なんですよ。昔は、マスメディアの影響が大きかったし、受け手も共通の話題があった。でも、SNSによって個人がメディアになり、情報が細分化されました。そして、一個人に共感する人たちが集まり、各所でコミュニティが生まれています。

たとえ1万人のフォロワーでも、月に1000円の会費を募っただけでビジネスが成り立った事例を耳にしたことがあります。こういうコミュニティが今の時代たくさんある。Z世代と呼ばれる若者は、生まれた時からオンラインの環境下で育ってきたから、ネットの嘘をなんとなく見抜くんですよ。

だからこそ、人を振り向かせ、コミュニティを築くうえで大事なのは、ピュアさと熱量、そしてストーリー。そういった現状から、昔は“オタク”と呼ばれた人たちが小規模ながらもビジネスで成功し、居場所を見つけやすくなっているのが“今”。そんな時代とも言えますね」