古き良き台湾が混在する南国リゾート「墾丁」6つの魅力 〜後編〜

高雄からバスで約2時間半。無数の絶景や、大自然の恵みを生かしたアクティビティやグルメ。環境を求めて都心から移り住む人や、世界水準のホテルが、新しいリゾート+カルチャーを形成し始めた。次のブームはココ、墾丁(ケンティン・Kenting)だ!

photo: Teikoukei / coordination: Machiko Suzuki

早めに行かないとすぐに売り切れる、
オーガニックなお団子屋さん。

SWEETS:
白羊道柴燒麻

オーナーの陳婉玲さんが屋台や宅配を始めてから16年。店を構えて8年目の〈白羊道〉はいつも行列が絶えない甘味処。厨房で伝統的な餅作りに励むのは劉政瑋さん。「すべては自然から始まり、自然に還る」という考えのもと、材料はすべてオーガニックにこだわる。

台湾〈白羊道柴燒麻〉「豊盛」
「豊盛」。餡入りのお団子+ピーナッツ粉・擦りゴマ110元。左上から時計回りに粟餅、紅米、ピーナッツ餡入りの玄米餅、つぶ餡入りの黒米。中に餡を入れるタイプの餅は樹薯(キャッサバ)の粉をまぶす。

有機米を粉状に擦って水分を抜いた後、ペースト状に。決め手は湿度に合わせた水分調整。蒸した餅を一つずつ丁寧に丸めていくことで、水分をたっぷり含みながら弾力がある、味わい深いお団子が出来上がる。

もち米や赤米は池上から、紅米や黒米は宜蘭から。そのほか小豆、ピーナッツ、ゴマもすべて、台湾の産地と生産者を店内表示するなど安心安全をアピールする。

お茶は標高1700mで摘まれたオーガニックな摩天烏龍をはじめ常時8種類は用意。お茶のコンテスト同様、色や茶葉の開きを確認できるよう、丼で供される。

脱サラしたビール好きオーナーが、
醸造所に博物館まで併設しちゃった。

BREWERY:
恆春3000啤酒博物館

高雄で17年間、エンジニアとして働いていた鐘文清さんは、無類のビール好きが高じて一念発起。渡米して醸造やビジネスの勉強をした後、醸造のプロと組んで地ビールを造り始めた。

銘柄はすべてこのエリアの地名や名所にちなみ、例えば、ピルスナータイプの「白砂」、クリームエールの「満州」、ホッピーラガーの「墾丁」などのラインナップが揃う。
中でも、イギリス風の苦味が効いた「關山」は2017年度オーストラリアの国際ビールアワードのESB部門で銅賞を獲得した本格派。

台湾〈恆春3000啤酒博物館〉店内
モナリザの絵はビールのラベル8,400枚で構成するモザイク。1枚だけ亡き妻の写真があると鐘さん。

来年は最高峰といわれる英国のWBSにも挑戦する予定だ。名前のとおり、店内には3000個ものビアマグがディスプレイされている。

2階には紀元前から1900年代までのビール醸造の歴史を学べる博物館が。各国の資料とともに丁寧にわかりやすく解説している。どちらも必見だ。

移住組の若きオーナーが手がける、
街の新たなランドマーク。

RESTAURANT:
波波廚房

風光明媚な墾丁エリアも、その中心地はハイシーズンともなればかなり賑やか。リゾートらしさもいいのだが、落ち着いて食事をしたい場合は、すぐ隣町の恆春に出かけるのがオススメだ。

墾丁から車で20分も走れば観光地とは違ったローカル風情の店が多く立ち並び、財布に優しくて、おいしい店に出会える。また、台北や海外からの出戻り組が出した本格的な店も多く、散策しているだけでいろんな発見がある。

中でも台湾屈指との呼び声が高いイタリア家庭料理の店〈波波廚房〉は、高雄出身のオーナー逸夫さんが3年ほど前から始めた店。主に台湾南部の新鮮な魚介や野菜を使った料理の数々が評判だ。

自家製の石窯から生み出される、本場イタリア仕込みのメニューの数々は、訪れる外国人も納得の味。
屏東産豚のポークヒレキューブ(180元)や、ファイヤーウッドオクトパス(230元)、ブラックトリュフのピザ(150元)のほかベジタリアンメニューも豊富で、味に深みが出るようにペーストから丁寧に仕込むこだわりよう。

築80年は経つという日本統治時代の建物は、病院として利用されていた時代を経て、2011年にリノベーションし現在の姿に。2階は広々としたレストランスペース、1階は吹き抜けを中心に、オーナーが手がける無添加ジェラート、天然酵母パン、自家焙煎コーヒーの店が並ぶ。

ほかにも細かく分かれた部屋の作りを生かして、クラフト工房兼ショールームや、フラワーショップなどの複合施設を形成する。

照明、什器、窓やソファなど、店内随所にオーナーのこだわりが見られ、リピーターや観光客が引っ切りなしに訪れる。日曜のディナーに訪れたなら、帰りに近所の恆春夜市を散策するのもオススメだ。