個性あふれる店が集い、常に変化を続ける街
〈新光三越〉や〈誠品書店〉などの商業施設が立ち並ぶMRT中山駅界隈。目抜き通りの中山北路を中心に東西に広がる複数の路地には、個人経営の店が軒を連ね、昼も夜もおおいに賑わう一帯だ。
朝は比較的話題に乏しいエリアだったが、2020年にカフェ〈好初早餐 中山店〉が登場してからは、人の流れにも変化が。インテリアデザイナーのオーナー・陳頌成さんを慕って、多くのクリエイターがモーニングを求めて集まり、街の朝の風景を変えている。
台北市初出店の人気朝食店はクリエイターたちの憩いの場〈好初早餐 中山店〉
新北市板橋區で人気の朝カフェの支店。店内はアメリカンダイナー風で、台湾テイストを取り入れたサンドイッチやハンバーガーを提供。オリジナルのマグカップやキャップを作ったり、ZINEやカセットを販売したりと、オーナーを取り巻くミュージシャンやイラストレーターたちの遊び場のような賑やかな雰囲気。これも台湾の豊かな朝食文化が生んだニュースタイルだ。
ピピさんと訪れたセレクトショップ〈HAVEN by nest〉も、デザイナーに縁深い場所。台湾を代表する日用品のブランド〈TOAST Living〉の旗艦店で自社の商品以外にも、デザインと実用性に秀でた作家のアイテムを取り扱う。
「以前はヘアサロンのために中山に通っていましたが、コロナ禍の間にこんな素敵な店ができたとは!」。雑貨集めが趣味ゆえ撮影の合間に使うタンブラーやランチボックスの物色に夢中のピピさん。
印刷所だった建物をリノベーションした、この店のある一帯は赤峰街と呼ばれ、バイクや車の部品店・修理店が軒を連ねる地域。
ここ数年は空き物件を改装した新店の開業ラッシュで、カフェ〈Tella Tella Cafe〉や〈Alpha Dogs〉、クッキー店〈koti koti〉やブックカフェ〈春秋書店〉など、個性あふれる店が集い、古き良き街並みに新たな活気を与えている。「今でも金属を削る音や、鉄くずの匂いがします。昔から続く日常の光景を垣間見られるのも、赤峰街を散策する楽しみの一つですね」
メイド・イン・台湾の実力に唸る!お土産探しも楽しい日用品の店〈HAVEN by nest〉
アメリカの大学院で工業デザインを学んだ〈TOAST Living〉創業者の林雍順さんは、その販売店〈nest〉を、台湾全土に展開。2020年に開業したこちらのフラッグシップストアでは、国産ブランドの優れた雑貨に加えて、ヨーロッパや日本の日用品なども取り揃える。2階にはドリップコーヒーを楽しめるカフェもあり、使用されているミルやドリッパーも購入することができる。
一方、中山北路沿いにもニュースポットが多数。ピピさんが訪れたのは、台湾スイーツの定番・豆花を現代風にアレンジして人気を博す〈榕美樹館〉。通りに面したテラス席がある茶館のような空間は、改装前は大衆食堂だったとは信じがたい洗練の佇まい。
「豆花も団子もシロップも、すべてが優しい味。老若男女に人気なのも納得です」と、豆花ラバーのピピさんも太鼓判を捺す。添加物を使用せずに毎朝手作りする丁寧な味わいが、シンプルな感動を呼ぶ。
代々受け継がれた豆花の味を洗練された雰囲気のカフェ〈榕美樹館〉
叔父が数十年にわたって豆花店を営み、「昔はリヤカーを引いて、売り歩いていました」と懐かしむオーナー・張瑋純さん。その叔父から引き継いだ味をブラッシュアップして、2020年に自身の豆花店を開業。当初は今の店の裏にあるビルの一室を借りての営業だったが、翌年には移転、〈榕美樹館〉を開店した。「表通りに店を構えることで、より多くの人に私たち家族の味を知っていただけるのが嬉しいです」
同じ通りに面する〈面線町〉も、台湾の屋台グルメ・麺線(ミェン・シェン)(そうめん入りのとろみ麺)をスタンド形式で提供し行列を作る店。中山北路に面したオープンエアな空間は、晴れた日には心地よい。
一方、眼鏡×ドリンクという斬新なスタイルで話題を集めるのが〈KlassiC.×COFFEE.TEA.OR 中山形象店〉。台湾で人気の女優・陳語安&インフルエンサー・Rayが立ち上げた眼鏡ブランド〈KlassiC.〉の路面店で、有名タレント・Luluプロデュースのティースタンドも併設されている。