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巻いて、巻き込んで、巻き込まれて。タコスをめぐる3回目の渡航で掘り当てた「タイ」の魅力

タコスとそうざいの店〈みよし屋〉が、再びのポップアップイベントでタイ・バンコクへ。今回は日本の9つのお店とブランドを“巻き込んで”。その滞在のなかで気づいた、「なぜバンコクに惹かれるのか」その答え。

photo & text: Taichi Abe / special thanks: theCOMMONS Thonglor

1年弱の間に3度。タコスを携えてバンコクへ

タコスとそうざいの店〈みよし屋〉が、ポップアップイベントでバンコクに出店をしたのは2024年5月のこと。1回目はその下見のため、2回目は出店本番のため。

そして2024年11月。またもバンコクへと渡ることになった。同年の初めから数えて3度目の渡航。これほどまでに短期間で同じ場所に渡ることは初めての経験だ。5月にイベントに来てくれた、商業施設『theCOMMONS Thonglor』のディレクターの声がけから、日本で言うと表参道のようなエリアに立つその場所で再びイベントを行うための渡航となった。

現地のローカルたちと繋いでくれる編集者の竹村卓さん、〈みよし屋〉のレシピも手がける〈and recipe〉の山田英季さん、会場装飾も含めたデザインまわりを担当するグラフィックデザイナーのBob Foundation・朝倉洋美さんという前回同様のメンバーで、およそ7時間をかけて海を渡り、バンコクへと向かった。

現地の人たちから観光客までハイセンスな客層が印象的な『theCOMMONS Thonglor』。軒を連ねる店舗や頻繁に開催されるイベントも新しくて面白い。この施設で〈みよし屋〉がタコスを提供するだけの内容ではコンテンツとして不十分ではないか。そう考えて、今回は私たちだけではなく、日本の全国各地で個性的な動きを展開する仲間たちに声をかけることにした。

「バンコクでポップアップをやらない?」というひと言に始まり、各店舗とブランドに丁寧に内容説明をした上で、参加を決めてくれたのは全部で9つの店とブランド。

浜松市の『コーヒーショップ ミハル』、静岡市の『リサイクルショップ スペイシー』、大阪市の『ALL GOOD STORE』、有孔ボードを使ったプロダクトをはじめ様々なホームデコを発表するブランド〈YOU CO.〉、東京は神楽坂にある『トーキョーサワースタンド』、兵庫県城崎町からはベイクショップ『LIM』、長崎県は波佐見町の『西海陶器』といった面々に加えて、竹村さんのブランド〈EL BURRITO’S SKATE AMIGOS〉に朝倉さんが手掛ける〈DAILY BOB〉というラインナップで、日本の「縁日」をテーマにイベントを開催することとなった。

自国のカルチャーが色濃く残る都市。掘れば掘るほど、知らない「タイ」が出てくる

会場施工からBGMの選曲までをこちらのチームで行った今回。前回同様、バンコクの友人たちも足を運んでくれて、また一歩タイが自分に近くなった気がした渡航となったわけだが、なぜこれほどまでにバンコクが魅力的に映るのか。滞在中にチャーンビールを飲みながら、竹村さんがポロリと漏らした見解が面白い。

「シンガポールやマレーシアと同様に、タイだって欧米のカルチャーを積極的に取り入れているのだけど、この国が突出してユニークで魅力的に映るのは、日本以外のアジア諸国で唯一、植民地化されていないからだと思うんだよね。そのためなのか、自分たちが昔から持っているカルチャーがまだ色濃く、根強く残ってる。そこに異文化にも寛容な国民性も相まって、独自のスタイルで文化がミックスされているから面白いし、惹かれちゃうんだよね」

もちろん、それは個人的な視点ではあるけれど、3回の渡航で現地の友人たちと会話を重ね、さまざまな場所に足を運び、全身をもって理解できる言葉だった。掘れば掘るほど、知らない「タイ」が出てきて面白い場所なのだ。

ビジネスの面から現地の人たちに話を聞くと、法人を設立するにはタイ人のパートナーが必要で、経営する際にも一定数のローカルたちを雇用しなくてはならない決まりがあるようだ。もちろん、それは新規事業の参入障壁にもなるのだけど、自国の人たちの暮らしや文化を守ることにも繋がる。経済の発展が目覚ましい一方で、その制度のおかげか昔ながらの屋台や商店が立ち並ぶその風景も、私たちをタイに赴かせる大きな理由なのだと思う。

老舗タコスやさん『セーウ』
新しい施設が立ち並ぶ一方で、こちらの『セーウ』のような老舗も。僕たちの朝はこちらの麺からスタートする。

おかげさまで大盛況となった『theCOMMONS Thonglor』でのポップアップイベント。このイベントをきっかけに、タイの友人から紹介してもらった繋がりから、今度は『unscene』というワインバーでポップアップを行う運びとなった。

この原稿を書いているのは2025年の3月、そのイベントのために渡航する飛行機の中。たった今、スワンナプーム国際空港への着陸態勢に入るアナウンスが機内に流れた。サワディーカップ、バンコク。今回はどんな「タイ」が見られるのか、楽しみで仕方がない。