旅人たちの窓辺。カメラマン・黄瀬麻以が撮る、フェリーの窓

photo: Mai Kise / text: Takuro Watanabe

窓は旅情をかき立てる。移動中のふとした瞬間に出会う美しい景色は窓とともに記憶され、窓から差し込む光が訪れた場所の思い出を特別なものにする。カメラマン・黄瀬麻以が語る、忘れられない旅の窓。

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フェリーの窓

窓の向こうに流れるオーランド諸島の景色。「ムーミンの作者が暮らしていた島もあるそうです」

この夏に北欧を旅した時にフェリーに乗る機会が多かったのですが、バルト海のフェリーの窓越しの景色に心を奪われました。飛行機の窓も車や電車の車窓も好きなんですけど、船の窓ってとにかく大きいんです。

「レトロな雰囲気に夕日が合うんです」

ゆっくりと進むフェリーで横に移動しながら絶え間なく動いている海をボーッと眺めていると、時間軸とか距離感とかいろんなものが取り払われ、今自分がどこにいて何をしているのかもわからなくなって、ある種のメディテーション状態になってくる感覚がありました。陸地では得ることのできない感覚でしたね。夏至を過ぎた頃だったんですけど、なかなか太陽が沈まないから、ずっと窓から西日が入っている感じも、すごくいい時間なんです。

「ボーッとしている私と対極的に、仕事をしているおじさん」
「フィンランドからオーランド諸島に向かうフェリーのバーではひたすら景色を眺めていました」
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