アーティスト名が分からないぐらいがいい塩梅
「ライブに行ったらほとんどの確率で買っている会場限定のグッズTシャツ。好きなアーティストのセンスを信頼しているから、たとえ買う前にTシャツのデザインを見ていなかったとしても、実物を見て『失敗した〜!』とは思わないですね」
アーティストやバンド、DJのテイストによって、デザインも千差万別。渡辺さんはどのようなTシャツに惹かれる?
「正面にドーンと、大きくアーティスト名が入ったものはあまり着ていないかも。一見普通だけど、アルバム名や曲名、ライブツアーの名前がひっそりプリントされているぐらいがちょうどいい。『それ何のTシャツですか?』って聞かれると嬉しいですね。そこから相手とのコミュニケーションが生まれる、いいきっかけになるんです」
EGO-WRAPPIN'
「2012年から、毎年夏に開催されている恒例のワンマンライブ「Dance, Dance, Dance」のグッズ。年によって販売される色が変わるから、毎回チェックしています。淡いピンクは2017年のもの。当時の価格で3,000円とアーティストグッズにしては手頃で、気兼ねなく買ったのを覚えています。スタッフ用のカーキ色が魅力的で、どうにか買えないか頼み込んだけどダメだった」
Summit
「PUNPEEやSIMI LABらが所属するサミットが開く、年に1回のお祭りイベント“AVALANCHE”で買ったもの。このグレーは2014年の限定色ですね。なんといってもこのシンプルさ!普段着にはぴったりで、相当長く着ているはずです。BIMさんにインタビューするときに着て行ったら喜ばれたのも思い出」
Pepe California + TAKEDA KAORI
「Pepe Californiaのメンバーとは、かれこれ20年以上付き合いがありますね。楽曲はもちろんのこと、彼らが手掛けるグッズもいつもいいんです。これは2019年、TICAのTAKEDA KAORIさんとタッグを組んだアルバム『Take Me Down』のジャケット文字を背中にプリントした一枚。手刷りならではの風合いがよくて、リュックで文字が擦れても、これもまた味ということで」
Sadar Bahar
「シカゴのDJ、サダー・バハーはとにかくご機嫌なディスコをかけてくれる、伝説のプレイヤー。2019年まではよく日本のイベントに出演していたんですよね。これはその年、青山の〈RESTAURANT BAR CAY〉で行われたツアーで買ったもの。実はこのイラストね、永井博さんが描いているんですよ。彼は相当な7インチのソウル&ディスコのレコードコレクターで、このイラストも快諾したそうな」
Cold Chillin' Records
「1980年代のHIP-HOPシーンで一大ムーブメントを起こしたDJ、マーリー・マール主宰のレコードレーベル。弟子のピート・ロックと共に参加した数年前のイベントで発売されたショッキングピンクのこのTシャツが欲しくて仕方なくて!だけど即完で間に合わず。泣く泣く諦め、忘れかけた頃に下北沢の〈disk union〉で出会った、ある種運命的な一枚」
Lee Perry
「最後に、これは言うまでもない、リー・ペリーのグラフィックT。ボブ・マーリーの生みの親としても有名な、ジャマイカのプロデューサーです。彼が2010年に来日した際に買ったこのTシャツのグラフィックは、彼のスタジオの壁一面に自身が描いたもの。細部まで緻密に描く、そのセンスが好きです。この手のタッチはハードコアやメタル系のアーティストに多い気がするのですが、レゲエでこの感じは結構珍しいような」