スタイリッシュではない、スタイルが生まれる場所でありたい。
「小さいけれど、形のいい波が立ってますよ。今日の波ならボードは7.0ftくらいがバッチリかな」。
到着するや否やガレージのボード置き場に通される。まずはサーフィン、から始まるのが、枡田琢治さんの家のルールだ。
映画『ビッグ・ウェンズデー』の舞台で、サーフィンのクラシックポイント、マリブ。
1990年、大学に通うため、訪れた枡田さん。自宅を構えるマリブコロニーは、学生時代の憧れの場所。パーティに忍び込み、この地の持つコミュニティのおおらかさに影響を受けたという。
世界中から枡田さんにサーフィンを学ぶべく集まる、有名無名の人々。この家に入り、ひとたび裸足になれば、肩書を脱いで純粋に海を楽しむ友人同士へと変わる。家は、フラットな関係をつくるための機能である、と語る。
「屋根にはPVSC(太陽光発電)パネルを設置、オフグリッドで暮らせるオーガニックな家にしたい。クラパット(・ヤントラサスト/建築家の安藤忠雄に師事した〈wHYアーキテクチャー〉クリエイティブディレクター)にお願いしました。
安藤さんの、何が起きても半永久的に残りそうな堅牢でソリッドな世界観。その中は、濡れたカラダで帰ってきて、裸足で歩いても滑ったり転んだりしない、安心してビーチカルチャーを楽しめる環境。この両方を見事に叶えてくれました」
インテリアは、デザイナーズは少なく、アーティストの作品も、「プロジェクトを組んだ仲間や、サーフィンを通じて知己を得た友人に譲ってもらったもの」。
ミュージシャンや俳優、映画監督など、この家を通じて友人となった人々が、新たなプロジェクトを始めることもあるという。
「LAには、いつもTシャツ短パンで髭面っていう人がいっぱいいる。今を追いかける、スタイリッシュさはないかもしれないけれど、ものすごいバイブレーションを持ったスタイルのある人々。彼らが集い、ものすごい発電を起こす。それを響かせるような家でありたい、と思っています」