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「愛って、勝手でいい」。杉咲花が選ぶ、愛の映画

愛の映画を語る時、その人が理想とする愛の形が見えてくる。俳優・杉咲花さんに聞いた、愛と映画の話。

photo: Ittetsu Matsuoka / styling: Tatsuya Yoshida / hair & make: Akemi Nakano / text: Mikado Koyanagi

愛って、勝手でいい

出演した『市子』という映画は、私が演じた失踪した市子という女性を追っていく物語なのですが、それと同時に、私は市子自身が自分の姿を探す話でもあるのではないかと思いました。自分が望む幸福に近づけば近づくほど、それが叶わない何かが立ちはだかってくるという、その苦しさが引き裂かれるほど痛くて。

明日も一緒にいたいと思う人と共に生活を送ることの幸福を知ってしまったからこそ、この先も望んでしまうのだろうなと。市子の中に他者を愛しているという実感があったのかどうかはわからないのですが、それに似たものを求めていたような気がします。

監督:戸田彬弘/出演:杉咲花、若葉竜也ほか/川辺市子は恋人からプロポーズを受けた翌日に失踪。行方を追う恋人は関係者に話を聞くうちに、過酷な境遇に翻弄されて生きてきた彼女の本当の姿に近づく。©2023 映画「市子」製作委員会

『ちひろさん』の好きなところは勝手なところなんです。相手のために何かをするというより、自分がそうしたいからそばにいたり、距離を置いたりする。それって、人の本質な気がしていて。それから、ものを食べるシーンも印象に残っています。私は、何かを食べている時に、その人が何を大切にしていてどういうものに感動するのか、ほんの一瞬だけ心が垣間見える気がするんです。

ちひろとバジルがたこ焼きを食べるシーンで、バジルがとても可愛らしい動きをするのですが、そこには、構成上の狙いやお芝居などではなく、演じ手の中にある何かが出てきているような気がして。私は、映画の中のそういった瞬間がとても好きなんです。

海辺の小さな街にある弁当屋で働くちひろは、元風俗嬢であることを隠さず飄々と生きている。誰にでも分け隔てなく接する彼女のもとに、それぞれの孤独を抱えた人間が集まり、癒やされていく。監督:今泉力哉/出演:有村架純、豊嶋花、若葉竜也、リリー・フランキーほか。Netflix独占配信中。
俳優・杉咲花