言わずと知れたファッションデザイナーのジョルジオ・アルマーニ氏は、今年90歳の誕生日を迎えた。今も現役でデザインの現場に立ち、毎シーズン世界中の洋服好きを魅了するコレクションを発表し続ける巨匠だ。そんな彼が手がけるイタリア発のブランド〈ジョルジオ アルマーニ〉も、実は来年で50周年!1975年の創立以来、革新的な服作りで時代の先頭を走ってきた。
誰もが知る〈ジョルジオ アルマーニ(以下アルマーニ)〉というブランド、そしてアルマーニ氏の魅力について、BRUTUSでも一緒に企画を作っていただいているスタイリストの喜多尾祥之さんに話を聞いてみた。40年以上ブランドを見てきた喜多尾さんにとって、アルマーニとはどんなブランドなのか?喜多尾さんの私物とともに紹介します。
スタイリスト・喜多尾祥之さんが語るアルマーニ氏の魅力とは?
「僕が初めてアルマーニを買ったのは高校生の時。雑誌『ポパイ』で読んだ、ドレスダウンにイタリアものを交ぜて外すという着こなしに憧れ、〈エンポリオ アルマーニ〉のニットタイを買いました。
その後、アルマーニの真のすごさを思い知ったのは、スタイリストになってからのこと。“ソフトスーツ”が登場した時ですね。70年代のヒッピームーブメントの反動で、構築的なジャケットを軸にしたDCブランド人気が高まっていた頃に、アルマーニは時代の逆を行く存在でした。
パワーショルダーのスーツが流行するなか、ジャケットから肩パットを排し、ビスコースという婦人服に用いられる柔らかな素材でメンズスーツを作り上げたのです。揺れるように柔らかなスーツにTシャツを合わせるという、新しいファッションスタイルを築き上げたともいえます。まさに、革命でした」
柔らかさと知性溢れる服作り
喜多尾さんは25歳の時にソフトスーツを購入し、そのスタイルに傾倒していったという。
「アルマーニのかっこよさを一番よく映し出したのは、写真家アルド・ファライだと思います。彼の撮るビジュアルには僕も強く影響を受けました。イタリアやモロッコの街中で、現地のモデルたちの自然体の姿を切り取った写真は、アルマーニの持つ柔らかなエレガントさにマッチし、独特の“抜け感”が生まれていて。ほかのブランドにはない、肩の力が抜けたかっこよさがあったのです」
さらに喜多尾さんは、アルマーニ氏本人のファッションやライフスタイルにも、ブランドに通ずる信念が感じられると語る。
「デザイナーって、華美な人もいるし、逆に自分には無頓着な人もいるけど、アルマーニ氏の私服のバランスにも憧れます。建築にも精通していて、服作りに知性が宿っています。愛車もスーパーカーではなく、フォルクスワーゲンの白いビートルというのも粋。
また、近年の〈エンポリオ アルマーニ〉がエネルギッシュでとてもよく、“服作りを楽しんでいるな”と感じます。アルマーニ氏の活躍を見ると、情熱さえあれば年齢なんて関係ない、現役に終わりはないのだと勇気をもらいます。知的で大人なアルマーニ氏のクリエイションが、これからも楽しみです」