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実験的なドラマの主題歌はどう作られた?STUTS×butajiが語る、共作の妙

2021年4月から放送されたフジテレビ系ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』で注目を集めたのは、エンディング曲「Presence」だ。プロデュースを担当するSTUTSが手がけたトラックをベースに、毎話異なるラッパーが参加する実験的な試みの中で、共通するのは主演の松たか子が歌うメインテーマ。そのメロディと詞に参加したbutajiが、新作で再びSTUTSとタッグを組んだ。複数の制作を振り返りながら、共作の醍醐味を語り合う。

Photo: Masanori Kaneshita / Text: Emi Fukushima

意識が変わる瞬間=目覚めというキーワード

butaji

「Presence」の反響はどうでしたか? 僕はあんまり実感がなくて。

STUTS

発表するまでは不安だったんですが、世に出てからは反応が良く、安心しました。やっぱり松さんが歌うメロディが耳に残ると言ってくださる方が多くて。butajiさんさまさまです(笑)。

butaji

いえ(笑)。光栄です。どうして声をかけてくださったんですか?

STUTS

テレビドラマの楽曲は多くの方の耳に触れるので、口ずさめる歌謡曲的なメロディにしたかったんです。それでbutajiさんを紹介してもらって。

butaji

嬉しいです。びっくりしました。

STUTS

最初にデモのトラックをお渡しして、その3日後くらいに打ち合わせをした時点でデモを3パターン持ってきてくださったじゃないですか。あれがもう素晴らしかった。できてる!と(笑)。ほぼそのまま進みましたよね。

butaji

トラックから喚起されるイメージがあったので考えやすかったんです。歌詞は、脚本を拝見しながらも、STUTSさんからヒントをもらいましたよね。

STUTS

そうですね。僕は脚本を読んで、意識が変わる瞬間=目覚めというキーワードが入ったらいいなと思って。

butaji

それに加えて、脚本から感じた「カラッとした哀愁」を意識しました。大切な人の死を経ても、基本的には軽やかに進むところに強烈な印象を受けて。

STUTS

なるほど。重さと軽さが良いバランスになりましたよね。それと何より印象深かったのは、やっぱり作った曲を松さんに歌ってもらったことですね。

butaji

それは本当に新鮮でした!最初に、これまでの松さんの作品にないものを作りたいとおっしゃってましたよね。

STUTS

そうなんです。どんなふうに落とし込んでくださったんですか?

butaji

どう実現しようかと考えて、高めのキーに挑戦してもらおうと思って。松さんは低めで深みのある声質が魅力ですが、逆に高くしたらどうなるかなと。

STUTS

そういう意図だったんですね!あとはbutajiさんが作った曲のニュアンスをどう松さんに引き継いでもらうかはかなり一緒に考えましたよね。

butaji

はい、歌唱指導というか。

STUTS

僕からは、流れるように歌ってほしい、butajiさんからは息を多めに混ぜて歌ってほしいと伝えて。

butaji

その試行錯誤は良い経験でした。

共作は「想像以上」を生む。

butaji

新作の『RIGHT TIME』でも、ご一緒できて嬉しかったです。

STUTS

こちらこそ、楽しかったです。

butaji

「Presence」を一緒に作っている時のリスペクトと感動があったので、その制作が終わる前から、STUTSさんとまたやりたい、とずっと言ってたんです(笑)。なので、すぐにお誘いして。「YOU NEVER KNOW」はコードとメロディをお渡しするところからでしたね。

STUTS

そうですね、それでビートを組んで、アレンジをして。

butaji

歌詞は、トラックができてようやく書き上がったんです。僕の想定内で書こうとしたら筆が全然進まなくて。それがSTUTSさんから上がってきたものを聴いたらどんどん進むんですよね。印象的でした。

STUTS

良かったです 逆に、歌詞のイメージをトラックに反映させることもありますよ。「I’m here」は歌詞をヒントに輪郭をはっきりさせていきました。

butaji

STUTSさんとお仕事をすると、曲によってお互いの関与の仕方が流動的になるのが面白い。いろんなことができるSTUTSさんはやっぱり稀有だなと。

STUTS

いや、butajiさんこそ。

butaji

色んな才能を持つ方とお仕事をすると、自分の上限の向こう側を見られるんですよね。それが醍醐味だなと。

STUTS

わかります。僕の場合は、自分ができないことをお願いすることが多いので、事前にイメージをお伝えするんです。それでも、出来上がったものが想像以上になるとすごく嬉しい。だいたい想像以上になるんですけどね(笑)。

左:STUTS 右:butaji