ゲーム世界を、ただただ散歩する
「精神科医と行くDETROIT」「FGOを神話学者たちと見る」「ファッション業界人と行くCYBERPUNK 2077」。YouTubeに並ぶ興味深いサムネに惹かれ再生すると始まるのは、スゴ技やエンジョイ系ゲーム実況ではなく、ゲームの世界をただただ歩き回る動画。
特別なのは、散歩をしながらゲストとして招かれたさまざまな分野の専門家たちが、マップやゲームシステムなど、ゲームの作り込みについて専門的な視点で解説してくれること。動画が進むにつれ、今まで自分が遊んでいたゲームの解像度が上がっていく感覚、そして「こんな楽しみ方があったのか!」という衝撃を覚えた。
そんなYouTube動画を手がける『ゲームさんぽ/よそ見』ディレクターの飯田直人さんに、この遊びについて聞いてみた。
「僕がゲームさんぽという遊びに出会ったのは6年前、ゲーム好きな美術館スタッフの“なむ”さんに『音響の人と聴くFPS』という動画を見せてもらった時。当時あまりゲームに関心がなくて知らなかったのですが、ゲーム内の音って、空間の広さによって残響のパラメーターが変えられていたり、素材ごとに繊細な音の演出がされていたりするんですね。
すごく緻密に作り込まれている。それを知って、ゲームも誰かが愛情を注いで作った“作品”なんだという、ある意味当たり前の事実に気づかされました。3D空間上での音源データの配置など、ゲームの裏の構造を見るような感覚も新鮮でしたね」
以来、さまざまなゲームを散歩し動画にしてきたという飯田さん。今では自身のYouTubeチャンネルを立ち上げるほどに。これほどまで夢中になる理由は?
「視点を変えることで世界が新しく見える、という発見だと思うんです。専門家の目や耳を通すことで、自分では気づけなかった部分を知ることができる。僕たちが普段ゲームをしながら無意識的に感じている“楽しい”という気持ちを、専門知識で解析していく作業とも言えます。
ゲームの作り込みって、言ってしまえば知らなくてもクリアはできちゃうわけで。けど、そういった細部に光を当てることで世界の解像度が上がる。無駄な部分にこそ、没入感への鍵があると思うんです」
ゲームさんぽのゲストの多くがゲーム初心者であるというのも面白い。
「初心者でも楽しめるのも、ゲームさんぽのいいところ。クリアすることが唯一の目的ではないので(笑)。それに、ゲームを知らないからこそ見える部分もある。自分じゃ絶対に気にしないところにゲストが目を光らせた瞬間は毎度楽しいです。現実世界を散歩しながら景色の変化を楽しむように、ゲームの世界を自分なりの視点で散歩してみてください。思わぬ発見があると思います」
飯田さんが選ぶ、素敵な「ゲームさんぽ」
【ゲームさんぽ】音響の人と聴くFPS【R6s】(なむ)
ゲームさんぽの生みの親、なむさんのチャンネルを代表する一本。「ゲームの音に注目するという視点の新しさをはじめ、ゲームさんぽの魅力が詰まっています。キャラを動かすことで変化する音を楽しむ、ゲームのインタラクティブな面にも気づかされます」
【永久保存版】マイクラで学ぶ「欲望の人類史」1/帝国主義とテクノユートピア(ライブドアニュース)
大学教授2名が『マインクラフト』の世界で、ユーザーが作った建築を鑑賞する動画。「かなり難しく高度な議論が展開されているのですが、ゲームを通すことでマイルドになってスッと受け入れられる。30〜40分の動画でも、散歩なら見ていられるんですよね」
【1番オシャレなNPCを探せ!!】業界人と行くゲーミングおしゃれSNAP2023/サイバーパンク×ゲームさんぽ#01(ゲームさんぽ/よそ見)
ゲーム初心者のファッション編集者とPRが『Cyberpunk 2077』を散歩。「NPCの衣装のレザーの質感やジャケットのパターンに注目するのは自分にはない感覚。アイテム一つ一つの作り込みの細かさに衝撃を受けました。フランクな回なので誰でも楽しめます」