猫の路上観察をする端緒となったのは、中野区立中央図書館の像(1)。エアポケットに佇むその姿が気になり署名の「関孝行」を調べると、墨田区の像(2)を発見。共通するでっぷりしたフォルムに興味が止まらず横浜の工房(3)へ。
彫刻家、関孝行さんはこの道約40年のベテランで作品のモチーフは30年前に出会った一匹の猫だという。「当時、工房に忍び込んだ野良猫を“みーこ”と呼んで可愛がっていました。その子が太って真ん丸だったんです」。このぽっちゃりに歴史あり!そうと知ると俄然猫“らしき”ものを探したくなる。

関孝行作「本を読む猫」。中野区からの依頼を受けて制作した石像。開いたページには右に生魚、左に骨だけになった魚が描かれている。

関孝行作「琵琶を弾く猫」。墨田区から依頼を受けて制作。瞳と楽器に金箔があしらわれていてキラキラ輝く。

ギャラリー〈夏庭〉での展示に合わせて制作したのはなんと、大人でも座れるほどのビッグサイズ。「子供の頃に神社の狛犬に乗って遊んだことを懐かしんで作りました」というワイルドな思い出がある一作。
銀座の交差点では恋の招き猫(4)を発見。谷中(5)では猫より猫の像の方をよく見たし、日暮里駅(6)看板の耳や肉球、しっぽをあしらった文字には一本取られた!

銀座四丁目交差点の石像「のんき」に触れば恋の願いが叶うという。手がけたのは世界的彫刻家の流政之。撫でられてゆっくり経年変化していく、永遠のアートピースだ。

あやうく見落としそうだったのが、この日暮里駅西口の看板。よく見ると「暮」の草冠が耳に、「駅」は肉球としっぽになっている。
荻窪(7)や四ツ谷駅(8)付近にも猫。驚いたのは黒猫ビル(9)。なぜ猫が?その謎こそが味。ミステリアスな猫と路上観察は好相性だ。

白山神社の手水舎(ちょうずや)には、玉を持った猫が。近づくと玉から出る水が竹を伝い、手を清められる。尻をついて背骨をピンと伸ばした姿勢が愛らしい。

手水舎で働く猫あらば、のんきに日向ぼっこをする猫もいる。御利益があるかは謎だが、そばに10円玉がお供えされていた。

サックスを吹くおじさんの像などでも知られる彫刻家、黒川晃彦さんの作品「春」。四ツ谷駅麹町口を出てすぐの場所にある。

大通りを一本入ったところに突如現れる猫ビル。壁が曲面になっているおかげで、顔面の迫力は5割増し。3D映画のようだ。