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スティーヴ・ジョブズの偉人伝。彼を知るための3本の映画

名前は耳にしたことがあるけど、知ったつもりでよく知らない。そんな偉人がいたりする。主役脇役を問わず、彼らが登場する映画を観れば、手に取るように生きざまがわかる。

text: Keisuke Kagiwada

天才と変人は紙一重
世界を変えた男の裏の顔とは?

歴史に名を残す天才の中には、どうしたことか人でなしが多い。モーツァルトしかり。野口英世しかり。アップル社の共同設立者であり、若者を鼓舞するメッセージを数多く残しているスティーヴ・ジョブズもまた、実は名簿入りに足る人物だったようだ。

それは2013年に公開された『スティーブ・ジョブズ』で余すことなく描かれる。彼が仲間たちと家庭用コンピューターを作り、ガレージで始めた会社をみるみる成長させたこと。自分が立ち上げたにもかかわらず、役員とそりが合わず会社を追放されたこと。その後、経営の悪化に伴い呼び戻され、株式時価総額を世界一にしたこと。

そうした彼の栄枯盛衰の遍歴を追ったこの作品の節々で、人でなしぶりが強調されている。社員がちょっとでも反論したらすぐにクビにしたり、ガールフレンドが妊娠しても自分の子供とは認めずに足蹴にしたり……。

このことは、3つの製品発表会の舞台裏のドタバタだけに絞って作られた、2015年公開の『スティーブ・ジョブズ』でも同様だ。発表直前にトラブルがあれば社員を口汚く罵り、ガールフレンドが娘を連れてきて養育費を請求すれば「俺の娘じゃない」と突っぱねる。同じ男がすぐ後に笑顔で製品発表するかと思うと、その二面性には寒気がしないでもない。

そんなジョブズのライバルが、マイクロソフトの生みの親であるビル・ゲイツだ。2人の攻防を描いた『バトル・オブ・シリコンバレー』においてもジョブズの傍若無人ぶりは健在だが、ゲイツもまだ存在しないソフトウェアを達者な口上のみでIBMに売りつけるなど、温和そうな顔してなかなかの危険人物だ。人類は人でなしたちの築いた世界に住んでいるということかもしれない。