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市川紗椰 × ハマ・オカモトの『スター・ウォーズ』ドラマシリーズを語らせろ!〜後編〜

『スター・ウォーズ』ドラマシリーズが、どうやら面白いらしい。大の『スター・ウォーズ』ファンである、モデルの市川紗椰さんとミュージシャンのハマ・オカモトさんがドラマシリーズへの溢れる愛を大放出。これを読んだら、あなたも観ずにはいられないはず。前編はこちら

text: Katsumi Watanabe

クルーものとして秀逸な隠れ名作「反乱者たち」

『スター・ウォーズ 反乱者たち』
『スター・ウォーズ 反乱者たち』
総監督のデイヴ・フィローニによる2作目の長編3D・CGIアニメシリーズ。時代設定は『エピソード3/シスの復讐』と『エピソード4/新たなる希望』の間の物語。惑星ロザルのコソ泥業少年、エズラ・ブリッジャーが、ヘラ・シンドゥーラやサビーヌ・レンらの反乱組織ゴーストチームのメンバーと出会い、自らも闘争に身を捧げていく。

オーダー66を生き抜いたジェダイ、ケイナン・ジャラスは、エズラにフォースセンシティブだと見抜き、パダワンとして成長していく姿や、ベイダーとアソーカーのライトセイバー戦など。『アソーカ』前夜の物語として、オンエア後に人気が上昇した作品。

画面はキャプテン・レックスとゴーストチームがタッグを組むシーズン2『消えた戦士たち』より。ディズニープラスで独占配信中。

(C)2023 Lucasfilm Ltd.

ハマ

前編でも言いましたが、『反乱者たち』は、めちゃめちゃおもしろかったです。実は2015年の公開タイミングの時は「新シリーズって、ちょっとどうなの?」という、どこか冷めた気持ちでいて。『クローン・ウォーズ』はおもしろかったので、絵柄を見てみたら、全員知らないキャラクターだったし。

市川

わたしも見始めた時は「今から知らない少年の話をされても、本当にきついかも」と思っちゃったんですよね。子供向けの感じもあったし、途中で脱落しちゃいました。でも、たまたまやっていたのを観てみたら、意外とおもしろかった。そのうちにアソーカも出てきて。まさかこんなに素晴らしい作品になるとは……途中から夢中になっていました。

ハマ

実際に観てみると、クルーものとして、すごく秀逸な作品ですよね。それぞれのキャラクターもいいし、ずっと観ていられる。思えば『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)より、ずっと前なんだよな。

市川

そうなんですよ。ドロイドのチョッパーなんて「こういうドロイドを待っていました!」という感じでした。

ハマ

結果、アストロメク(ドロイド)の中で一番好き。『アソーカ』には実写で出てくるし、やっぱり『反乱者たち』を観ておいてよかったな。

市川

それから主人公のエズラ・ブリッジャーが迷い込む「間の世界」が好きなんですよ。結果的にはフォースとも近いわけですが、精神世界を映像で見せてくれることは、今までない世界線でした。ちょっとファンタジー要素が強いけど。

ハマ

エピソード1〜3を全力で補完した『クローン・ウォーズ』に対し、『反乱者たち』には、総監督のデイヴ・フィローニの世界が投影されているというか。精神世界やアナザー・ディメンションを描いた場合、観客を放置したり、嫌な感じになりがちだけど、すごく自然に出てきますよね。さらに『アソーカ』では、実写でも描いている。

市川

確かにそうですね。そしてフィローニの愛娘とも言えるアソーカをどう育てるか。元々のマスターでもあるダース・ベイダーも出てきますが、割合もちょうどよかった。

ハマ

あくまでもアソーカとの関係性だけ描くという。潔いと思いました。ファンを喜ばせるオマージュの塩梅がちょうどいいんですよね。

市川

キャラクターグッズをヒットさせなければ続けられないと思いますが、親しみのあるキャラクターを出すタイミングとか、絶妙すぎましたよね。そこはアニメだからこそ、いろいろできたこともあるでしょうね。俳優やセットなど必要ないし。

ハマ

アニメだから子供向けという先入観はあるかもしれないけど、相変わらず、戦争や政治、兵士や残党の話が多く、大人向けの空気感で統一されている。そこがいいんですよね。

市川

長いんだけどアニメシリーズ『クローン・ウォーズ』と『反乱者たち』は、おもしろいので、観た方がいいと思います。

ハマ

ドラマシリーズ『アソーカ』や『マンダロリアン』を見た後、YouTubeの解説動画などをチェックする人が多いそう。それを見るなら、せっかくDisney+に入っていることだし、『クローン・ウォーズ』の1話目だけでも観た方がいいですね。

Disney+の実写ドラマシリーズ第1弾『マンダロリアン』

『マンロリアン』シーズン3
『マンロリアン』シーズン3での一コマ。真ん中にいるのが主人公のディン・ジャリン。(C)2023 Lucasfilm Ltd.

市川

『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』と『スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒』の間に起きた話が『マンダロリアン』。単純なんですけど、ザ・チャイルドことグローグーがとにかくかわいい!母性が溢れまくりました。なんだろう、少子化対策か何かの一貫なのかな(笑)。

ハマ

(爆笑)。正直「これはズルいなぁ」と思い、なるべく好きにならないようにしていましたが、最終的にはグローグーばかり気になっちゃって。

市川

マンドーだってかっこよかったし。すごく楽しく観ました。『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』に、ほんの数秒しか出てこないボバ・フェットの種族を、ここまで膨らませるなんて。

ハマ

台詞もないしね(笑)。カルチャー的に見ても、もう奇跡でしかないじゃないですか。日本で始まった時に、やっぱり子連れ狼みたいだと話が出ていましたけど、海外の人たちからすれば、その要素も魅力というか、新鮮なんでしょう。

市川

西部劇っぽいようなガンマン感も、観ていて新鮮でしたね。

ハマ

『マンダロリアン』の制作当初、ヒットするとは絶対読めないはずですよね。結果として、ジェダイ出身のマンダロリアン見習い・グローグーというすごい設定のキャラクターが生まれるわけですけど。

市川

マンダロリアン出身のジェダイはいましたが、グローグーの存在はありえないですよね。

ハマ

時系列は逆になりますが、『マンダロリアン』をリアルタイム鑑賞し、最近『反乱者たち』を観たばかりだからわかるけど、惑星マンダロアやダークセーバーなど、「ウソでしょ!?」みたいな回収の仕方をするんですよね。銀河の話が、連綿と続いているんです。

市川

細かいキャラクター描写やエピソードもよかったですね。主人公であるマンダロリアンのディン・ジャリンは、グローグーの希望をホイホイ聞いちゃう感じがあって。なんか言われるがままに行動するところとか、おかしいですよね。

ハマ

その塩梅がちょうどいいですね。スター・ウォーズの大ファンだったジョン・ファブロー監督がシーズン1の最初の山場に満を持してアサシン・ドロイドIG-11を出してきて。局地的にめちゃくちゃ盛り上がりました(笑)。

市川

最後までかっこいいし、泣かせてくれました。

ハマ

それからマンダロリアンのディン・ジャリンは仮面、50歳にして乳飲子状態のグローグーの2人旅なんだけど、見続けているうちに、こっちも2人の感情が読めてくるって、すごいと思うんですよ。

市川

こんなに愛着が湧くなんて(笑)。シーズン3が終わったところで、進んだような、進んでないような感じですけど。ここから、多分ファブローが描きたかった宇宙ウェスタンが始まるんじゃないかと思っています。もう少しグローグーが動けるようになって、バットマン&ロビンみたいになっていくというか(笑)。

ハマ

同人的な読みですね。僕は最初に『マンダロリアン』を観た時、宇宙船のコックピットの映像が、一番ルーカス作に近いと思った。ディン・ジャリンの乗るレイザー・クレスト号のコックピットの機材の明かり、座席の位置、照明など。オリジナル作品に近いと感じました。

ハマ

そして『アソーカ』に繋がるわけですけど、『マンダロリアン』と同じ時系列の話ですね。シリーズとしては、エピソード0みたいなテンションだったので、よっぽどのことがない限り、続編が期待できる作品ですよね。巷では『マンダロリアン』との合流という噂もありますが。

市川

ドラマシリーズ『オビ=ワン・ケノービ』(2022年)にダース・ベイダーを演じたヘイデン・クリステンセンが、『アソーカ』オンエア前から、今度はアナキン役で登場するとアナウンスがありましたね。

ハマ

オビ=ワンのドラマが始まると聞いた時、正直「もうオビ=ワンは充分だよ」と思ったんですよ。これまでも『反乱者たち』では登場しているし、再登場した作品がつまらなかったらイヤじゃないですか。でも、僕は『オビ=ワン・ケノービ』を観て、ベイダーがルークを皇帝に渡さなかったEP6のあの描写に、改めて感動したんですよ。こんなに時が経ってこう補完するのかと。

アナキンは『オビ=ワン・ケノービ』でも、人間的にいいやつだって、ずっと補完している。そういう意味でも『アソーカ』でアナキンを良い人間として描き、出演させるってことには、やっぱりめちゃめちゃ意味があると思って。

市川

素晴らしい演技と殺陣。ヘイデン・クリステンセンに拍手をするという作品だと思う。

ハマ

救われた気がしました。ファンとして。

市川

アソーカもいろいろ辛い経験をして、『アソーカ』の冒頭ではまだ暗かったんだけど、アナキンの存在を実感してから、元の姿に戻って。

ハマ

アナキンはアソーカへ、実はジェダイの修行用のディスクを残していたという。しかも10枚も(笑)。弟子思いなんですよね。『エピソード3/シスの復讐』だけ観ると、「いきなり、こんな闇落ちする?」とか思っちゃうけど。

市川

アナキンは『フォースの覚醒』に登場する、孫であるカイロ・レンの前には現れませんでしたよね。『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』(2021年)で、ルークが建て始めていたジェダイ寺院には、恐らくヘラ・シンドゥーラとケイナン・ジャラスの息子、ジェイセンだっていたはずなんですよ。

ハマ

辛いですが、その流れは決まっていますよね。

市川

カイロ・レンは、ジェイセンも手にかけてしまうのか。それから『アソーカ』のエンディングから妄想したんですが、例えば、『スター・ウォーズ エピソード9/スカイウォーカーの夜明け』(2019年)で、レイが聞いた謎の声は、アソーカがシスターになり、モーティスの神たちと共に送ったものなのか?とか。

ハマ

そうなると、新3部作のいろいろな謎が解けるという。

市川

そうなってくれると、なんかいろいろ(気持ちが)楽になります。

ハマ

わかる。ファンは引き続き、新3部作をなんとか好きになろうとしているので。

市川

ゴーストチームやスローン大提督だって、『フォースの覚醒』までには退場して、いなくなるわけですから。結果がわかっていて、ここから物語がどう向かっていくのか。そういうおもしろさがあると思うんですよね。

本当の、新たなる希望。キャシアン・アンドー

『キャシアン・アンドー』
『キャシアン・アンドー』
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』前夜を描いた、トニー・ギルロイ原案によるドラマシリーズ。『エピソード3/シスの復讐』で、シスの暗黒卿による銀河帝国が誕生、ダース・シディアスとダース・ベイダーは銀河を手中に収めた。ライバル「ジェダイ」を一掃した。

一方、帝国を倒すために反乱同盟軍がどう結成されていくのかが描かれる。ライトセイバー戦や宇宙での戦闘など、派手さはないものの、じわじわと評価が上がっている作品。ディズニープラスで独占配信中。

(C)2023 Lucasfilm Ltd.

市川

ドラマシリーズ『キャシアン・アンドー』(2022年)は、映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016年)のスピンオフですが、これがすごく好きなんです。『ローグ・ワン』自体スピンオフなのに、その脇役が主人公で、最初は「誰が見るんだ?」と思っていましたが。

ハマ

大きく出ましたね(笑)。でも、おもしろかったな。

市川

帝国が本当にイヤな敵役として、やっと確立されたというか。「惑星ドーンしますよ」、とか派手なことじゃなく、食料の配給を止めたり。これまでにあまり描かれてこなかったところなので、身が引き締まる思いでしたね。

ハマ

戦争の感じが一番ありますよね。スター・ウォーズには正義と悪と犠牲、そしてフォース。そういうテーマがあるとしたら、ローグ・ワン系は圧倒的に犠牲ですよね。

市川

群像劇で、戦時下に一人一人の正義と、どうやって生きていくかという。

ハマ

映画『ハン・ソロ』(2018年)の前半も、ちゃんと戦争ものだったから、よかったんだけど。

市川

『キャシアン・アンドー』は、長台詞の演説が多いんですよ。それがものすごくジーンときて。『マンダロリアン』シリーズが西部劇だったから、『アンドー』はレ・ミゼラブルというか。

ハマ

実はスター・ウォーズの世界が、どれだけ残酷で、辛い物語なのかということがよくわかる。よく言われている通り、社会派ですよね。

市川

それと同時に、スター・ウォーズから切り離しても、スパイやサスペンス的な作品としても成立しているから、ファンはより発見があるし、初めて見る人でも楽しめる作品だと思います。