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リス、ゾウ、バナナとワニ!?日本にある特化型動物園の世界

色々な種類の動物を満遍なく見られる動物園もいいけれど、特定のジャンルに特化した動物園には、濃厚な魅力がたっぷり。“特化型”だからこそ見つかるユニークな発見に、出会いに行こう!

text: Akiko Yoshikawa

町田リス園(東京)

人懐っこいリス200匹(!)を放し飼い

約200匹のタイワンリスが自由に暮らしている〈町田リス園〉。同園のリスたちは35年前の開園当初に導入されたリスの子孫。環境の変化などで淘汰され、生き延びた個体たちでもある。長い年月を経るにつれ、自然界の種より小柄で、人懐っこく、顎近辺の色が退化し、寿命が長いといった特徴を獲得した。

普段は外周200mの放し飼い広場の中で暮らしており、来園者はヒマワリの種を与えることができる。ただし、歯や爪が鋭いため、エサやりの時は、軍手が必須アイテムだ。

開業時から在籍している福田啓一副園長は、「リスとコミュニケーションが取れる」達人。数年前には福田副園長が描いたリスの看板が、その独特な画風から「凶暴すぎる」などとSNSでバズったことがあるので、園内にある看板も必見。
ウサギやモルモットなどの小動物も飼育されており、週末には「ふれあいコーナー」でエサやりなどを楽しむことができる。

体感型動物園 iZoo(静岡)

爬虫類、両生類がきっと好きになる

日本最大の爬虫類・両生類飼育施設。「動物とのふれあい」がコンセプトで、世界各国のヘビやトカゲ、カメなどを間近で見て、触れ合うことが可能だ。一部の外国産の爬虫類は屋外で飼育展示しているため、より野生に近い状態で観察できる。

「世界一美しいイグアナ」と呼ばれるヒロオビフィジーイグアナや大きい個体だと1.5mにもなるキューバイワイグアナなど、日本では同園でしか見られない種も少なくない。
日本最大の繁殖施設でもあるゾウガメ牧場は、日本に3頭しかいない絶滅危惧種のガラパゴスゾウガメ1頭を筆頭に、約140頭のゾウガメを飼育。30kg以下の子供はゾウガメの背中に乗ることができる。

「ほかの施設では脇役の爬虫類がここでは主役。苦手な人が多いからこそ、体感型施設で触れ合って。繁殖にも力を入れており、一年中カメやトカゲ、ヘビなどの赤ちゃんがいます。爬虫類がかわいく見えるようになるはず」(白輪剛史園長)

ひびき動物ワールド(福岡)

有袋類の飼育数なら日本有数!

有袋類の自然飼育では国内有数の施設。園内には、大型のカンガルー、中型のワラルー、小型のワラビー、さらに小さいネズミカンガルーの4種約360頭が飼育されている。

「ふれあいコーナー」ではオオカンガルーと直接触れ合えるが、これは飼育員たちが長年の飼育経験を持ち、カンガルーの生態を熟知しているからこそ。1989年の開園から在籍するベテラン飼育員や、約360頭の個体を把握している飼育スタッフなどがおり、4種すべてで繁殖に成功。中でも、国内で3ヵ所でしか飼育されていないシマオイワワラビーの繁殖は日本初となった。

カンガルーたちの自然に近い活動が見られるように、できるだけ生息地に近づけた飼育環境を実現。初夏には朝夕の時間に活動的になるというカンガルーの習性を生かして、開園時間を2時間延長し「夕暮れ散歩」イベントなども行っている。また、大学と連携して有袋類の生態に関する共同研究も行っている。

市原ぞうの国(千葉)

タイのゾウ使いが大切に育む信頼関係

日本最多となるアジアゾウ9頭、アフリカゾウ1頭を飼育している〈市原ぞうの国〉。同園の前身は動物プロダクションで、仕事の依頼でゾウを購入したのがきっかけで、ゾウとの縁が芽生える。やがて「ゾウの楽園」を作りたいと、現在の形に発展していった。約30年前から繁殖にも取り組み、6例の繁殖実績を持つ。

タイからゾウ使いを招致し、彼らが中心となりゾウの飼育を担当しているため、ゾウとの信頼関係が深く、繁殖実績にもつながっている。また、ゾウが鼻で絵を描いたり、ダンスやサッカーをしたりするパフォーマンスや、ゾウの背中に乗る「ぞうさんライド」が楽しめる。ゾウの鼻にぶら下がっての記念撮影「ぞうさんリフト」(大人も可能)ができるのは日本でここだけ。

10頭のゾウの中で、特にチェックしておきたいのは、4姉妹アジアゾウの末っ子で、4歳の「もも夏」と「ら夢」。仔ゾウの成長を追うのも楽しみ方の一つ。

熱川バナナワニ園(静岡)

温泉街で見る、絶滅危惧種のワニ

静岡・熱川(あたがわ)温泉にある〈熱川バナナワニ園〉。バナナとワニってどういう組み合わせ?と思う人も多いはず。終戦から約10年後、戦地から戻った初代園長が「子供にとって憧れのバナナがあれば喜ぶだろう」と温泉熱を使ったバナナ園を開こうとした。そんな時、とある動物商が「一緒にワニも展示したらどうか?」と提案し、バナナとワニを併せて展示する同園が誕生した。

世界各地からワニを導入し、現在飼育するワニは、レッドリスト(絶滅危惧種)に登録された稀少種も含めて16種類約100頭。開園以来14種1000頭以上のワニの人工孵化にも成功している。

これほど多種類のワニを見られる施設は日本でもここだけ。水槽で2本足で立っているように見えるクチヒロカイマンなど、観察しているうちに、どんどんかわいく見えてくる。絶滅の危機に瀕しているワニについて詳しくなれる。ワニ以外にゾウガメやフラミンゴなども展示。

掛川花鳥園(静岡)

色鮮やかな鳥と花がいっぱい!

冷暖房完備のガラスハウス内などで、一年を通して色とりどりの鳥や花と触れ合える〈掛川花鳥園〉。一般の動物園では、鳥類はケージで飼育されていることが多いが、ここでは園全体で放し飼いしているようなもの。鳥に精通した飼育員たちも、来場者と同じ場所で作業していることが多いため、鳥について気軽に質問することができる。

1日3回のバードショーにはフクロウやタカなどが出演。来場者のすぐ横を低空飛行で飛び、さまざまな特技を見せてくれる。エサやり体験では、自分の手から直接エサを食べる鳥を間近に見ることができる。

100種類900羽もの鳥類がいるため、ほかの動物園では注目されない鳥が人気者になることも。ヨーロッパやアジア圏に生息する小型のキジの仲間「イワシャコ」は、特に派手さはないが、全身を脱力させて昼寝する姿などがかわいいと人気者に。ぬいぐるみやTシャツなど、オリジナルグッズが発売されるほど。