「ちょいと」を使う桑田さんのワードセンスに、色気を感じています
私は昔から「ちょいと」という間投詞が好きなんです。五社英雄監督の映画『吉原炎上』や『鬼龍院花子の生涯』で描かれるような、時代物の男と女の粋な色恋沙汰。キセルをくわえた艶のある花魁(おいらん)なら「ちょっと」じゃなくて、やっぱり「ちょいと」なんですよね。1文字しか変わりませんが、このフレーズを使う人のセンスに色気やロマンを感じるんです。昔からサザンの曲の歌詞には「ちょいと」(「C調言葉に御用心」など)が使われているので、桑田さんの言語感覚が好きで、新しい曲が出るたびに聴いていました。
新作『THANK YOU SO MUCH』に収録された「悲しみはブギの彼方に」や「ミツコとカンジ」の歌詞で「ちょいと」を聴くことができますが、中でも印象的に感じたのは「恋のブギウギナイト」でした。昨年放送された歌舞伎町を舞台にしたドラマ『新宿野戦病院』(フジテレビ系)の主題歌ですよね。最初に聴いた時は、桑田さんから主演の小池栄子さんへ宛てたラブレターだと思いました(笑)。気になる女性を、ちょいとダンスへ誘うセクシーな曲。艶があると同時に、少年のようなシャイな心情も反映されていて、面白いと思いました。

また同じく「恋のブギウギナイト」には「醜女(しこめ)」という、普段なかなか耳にしない言葉が出てきます。私自身、聴き慣れない、不思議な言葉やフレーズを聴くと心に鮮烈に残るので、それを中心にしてネタを作ることがあります。「醜女」は、単純にメロディや歌の世界観に合わせて使われたのかもしれませんが、常用語ではないキーワードを使って楽曲を作られる桑田さんには、一方的にシンパシーを抱かせていただいております。
私は、音楽的にはリズミカルかつノリのいい曲が好きなんです。『THANK YOU SO MUCH』は冒頭からディスコ調の「ブギウギナイト」ロックな「ジャンヌ・ダルクによろしく」という爽快な流れになっていて、とにかく最高でしたね。実は昨年、水谷千重子のコンサートで、ノリのいいサザンや桑田さんの名曲をカバーしようと思いつき、候補曲を挙げていたんです。いろいろと聴く中で感覚的にフィットしたのが、曲間のリズムブレイクのうえで桑田さんがシャウトするKUWATA BAND「スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)」でした。
まずはカラオケでカッコいい歌い方を思案していたところ、桑田さんが爽快な曲で聴かせてくれるサビでの発声法、言葉の伸ばし方が、どこかSuperflyの越智志帆さんの歌唱法と重なったんです。そこで桑田さんの曲を、越智さんが歌ったところを想定して真似てみたところ、なんとなく、近づけたような!
この取材中に、Superflyでも「スキップ・ビート」をカバーしていたと聞いて、驚きましたね。桑田さんの曲の歌い方のコツを摑(つか)んだので今後は、サザンの「Bye Bye MyLove(U are the one)」をカバーさせていただこうと思っています。
Hit Me Lyrics
ちょいと未来へSTEP を踏んで
「恋のブギウギナイト」より