Read

Read

読む

歌詞の名フレーズ味わう、よむサザン。【1985〜1992年】

サザン10年ぶりの新作『THANK YOU SO MUCH』を「読み物のようにしたかった」と桑田は語る。ならば、サザンのこれまでの楽曲をいま一度「歌詞」に注目して味わいたい。ニューアルバムを最大限楽しむための総復習、スタート!

text: Ryohei Matsunaga, Hitoshi Kurimoto

連載一覧へ

いけないケムリと水で その身をけずり落としてまでも

「星空のビリー・ホリデイ」/1985年

麻薬と酒に溺れた彼女の孤独から生まれた歌が彼女自身を救ったと歌う、伝説のジャズシンガーへのオマージュ。

Hi! lifeは絶頂(やま)ね Hi! 太陽は母(ママ)ね

「最後の日射病」/1985年

関口和之作詞・作曲。「絶頂」を「やま」と読む感覚が斬新。「ハイライフ(アフリカのポピュラー音楽)はやまねえ」とも聞こえる。

oh もう逢えないのだろう My friends 瞳の 奥で泣く

「夕陽に別れを告げて~メリーゴーランド」/1985年

意外とない直球フォークロック。戻れない青春を思って号泣じゃなく涙をこらえる描写がうますぎる。

世を論ず前に手(テイ)を 子に託す未来に目(メイ)を

「怪物君の空」/1985年

当時はフォークランド紛争を下敷きにしているとされた歌詞だが、40年後の今こそ痛烈に響く。

恋人に逢える午後は 波音も濡れている Hello Darkness

「Long-haired Lady」/1985年

斬新なアイデアが目立つ『KAMAKURA』で、初期のサザンらしさを感じさせる曲。「Hello Darkness」にピリッとする。

あんな冷酷遊技の彼方に 生き続けた夢

「悲しみはメリーゴーランド」/1985年

愚かな争いを国同士が繰り返し、罪なき人々が苦しむ歴史を「メリーゴーランド」に譬(たと)えたサザン流反戦フォーク。

愛を止めないで 君よあるがまま

「みんなのうた」/1988年

野外ライブでは桑田が放水するのが恒例で、最も盛り上がるナンバーの一つ。

おいしいね そりゃ見事だね ぐっと産業ロックの陽が昇る

「おいしいね~傑作物語」/1988年

音楽業界に対する批判と皮肉ととれる言葉がたっぷりと詰まったメッセージソング。

ぼくが観る 淫らな映像は

「女神達への情歌(報道されないY型(ケイ)の彼方へ)」/1989年

緻密なサウンドに乗せてAVを観賞する男性を描く。

Oh この胸に君を抱きしめて Oh もう一度あの頃に帰りたい

「忘れられた Big Wave」/1990年

山下達郎に影響されたという、桑田一人による多重録音のアカペラ。

泣いたりしないで 大人になれない 甘くて愛しい

「さよならベイビー」/1989年

シングルで初のオリコン1位を獲得。映画『彼女が水着にきがえたら』の主題歌。

性行為と同義の蜃気楼 In 1965

「フリフリ'65」/1989年

ザ・スパイダースの楽曲から引用したと思われるタイトルに象徴されるオールドスタイルのロックンロール。

夢見るような愛のPotion よせて 帰らぬあの夏の恋よ何処?

「YOU」/1990年

シングル曲ではないがCMで使用されたりライブで演奏されたりすることが多い爽やかな人気曲。

レモネードのCOKE 交わすマーマレイドのSMOKE

「悪魔の恋」/1990年

日本語と英語をミックスした言葉遊び的な歌詞が桑田らしいブルースロック。

カンカラで鳴らす三線(サンシン)の 音がユラユラ川面に響く

「ナチカサヌ恋歌」/1990年

原由子ボーカル曲。沖縄音階のメロディに乗せて沖縄戦への言及がさりげなく盛り込まれた一曲。

君は帰らぬ男性(ひと)を待ってる 波の音にも振り返る

「OH, GIRL(悲しい胸のスクリーン)」/1990年

AOR風のサウンドに乗せて、男性を待つ女性の心情が描かれる。

俺はラッキー 知れずハッピー 先人は愛人抱いてオロロン

「政治家」/1990年

当時はリクルート事件などが世間を騒がせた。政治家たちへの痛烈な揶揄が込められている。

身体で味わうそのしずくを 吐息に混じえて呼ぶ名前よ

「MARIKO」/1990年

レトロなコーラスワークとデジタルサウンドが合体したアップテンポのジャジーなナンバー。

愛・愛・愛 l'amour pour tout le monde

「GORILLA」/1990年

アフロポップのリズムとシンプルな言葉だけで構成されたギターがメインのナンバー。

君だけが抱き合うたび駄目になるのを見抜いていた

「逢いたくなった時に君はここにいない」/1990年

終わってしまった恋に対する後悔を歌った切ないバラード。

四六時中も好きと言って 夢の中へ連れて行って

「真夏の果実」/1990年

映画『稲村ジェーン』の主題歌に使用されたサザンを代表するバラードの名曲。

遠く遠く離れゆくエボシライン oh my love is you 舞い上る蜃気楼

「希望の轍」/1990年

映画『稲村ジェーン』以外にも様々なメディアで流れ、JR茅ケ崎駅の発車メロディでもある。

平成の愛人 東京サリーちゃん 外来の淫乱 ジプシー・サリーちゃん

「東京サリーちゃん」/1990年

語呂合わせ的な歌詞を絞り出すように歌うしゃがれ声が印象に残るブルージーな一曲。

情熱の相対性は NEO 終わり無き世の Blues

「ネオ・ブラボー!!」/1991年

シンプルなロックンロールだが、歌詞には当時の社会や世相についての暗喩を込めている。

悲しみを紡(つむ)いだ絹の色 誰かが愛しくて愛しくて星を見てる

「冷たい夏」/1991年

ミディアムテンポの落ち着いた楽曲で、どこかファンタジックな歌詞が印象的。

修羅場穴場女子浮遊 憧れのPARADISE☆PARADISE

「シュラバ★ラ★バンバ SHULABA−LA−BAMBA」/1992年

耳で聴くだけでは何を歌っているのかさっぱり意味不明な面白さが炸裂。

君だけに夢をもう一度 なぜに時間(とき)は流れゆくいつか捨てた恋なのに

「君だけに夢をもう一度」/1992年

軽快なビートに乗せて、終わってしまった恋と夏の終わりの切なさを歌う。

さよならは言葉にできない それは夏の運命(さだめ)

「涙のキッス」/1992年

ドラマ主題歌としても大ヒットした悲しい恋の終わりを描く失恋ラブソングの代表作。

君に魔のホリデイ 血塗る心理ゾーン 犯人(ホシ)はすぐそばにいる

「ホリディ ~スリラー『魔の休日』より」/1992年

おどろおどろしいサスペンスタッチでシュールな世界を描く。

君の小箱(こばこ)に種子(たね)を蒔(ま)いて Twistin' the night away

「BOON BOON BOON ~OUR LOVE [MEDLEY]」/1992年

セックスのことを歌いながら、リズミカルなロックンロールに仕上げている。

連載一覧へ