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魚豊の選ぶ歌謡曲。突き詰めた末に生まれた、共感性の高い歌詞たち

歌は世につれ、世は歌につれ。昭和から令和まで私たちとともにある歌謡曲。魚豊さんが選ぶ3曲は?

Text: Uoto

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1.amazarashi「明日には大人になる君へ」

amazarashi「明日には大人になる君へ」
作詞・作曲:秋田ひろむ/2016

大学生の時、『ソクラテスの弁明』を読んで、内容が歌謡曲にも共通することだと思いました。個人の悩みを徹底的に突き詰めると、その結果は普遍性を持つ。多くの人が共感する歌を“歌謡曲”の定義とすると、考え抜かれた末に生まれてきた共感性の高い歌詞ならすべて歌謡曲だと思います。

僕にとってそういう歌である「明日には大人になる君へ」と出会った時は衝撃を受けましたね。強い具体性と、相反する抽象的な言葉が、脳裏に引っ掛かり、感情移入しました。泥くさい表現に、“長渕剛”的なものを感じて、とても心に刺さりました。「くそったれ」的なマインドを、アクチュアルなamazarashiが表現したら、こうなるかもと。

2.Dragon Ash「静かな日々の階段を」

Dragon Ash「静かな日々の階段を」
作詞・作曲:降谷建志/2000

「静かな日々の階段を」は、ラップですが、ギャングスタやヘッズのようなスラングを使わず、誰にでもわかる美しい日本語のリリックです。ボーカルのKjはイケてる存在なのに、歌詞に引きこもりマインドが顔を出すんですよね。

臆病さを肯定してくれるけど、ノイズにならない程度の優しさで、先に進むことを促してくれる。その“情”にグッときます。

3.マキシマム ザ ホルモン「鬱くしき人々のうた」

マキシマム ザ ホルモン「鬱くしき人々のうた」
作詞・作曲:マキシマムザ亮君/2011

「鬱くしき人々のうた」は、ギリギリの精神状態で這いつくばっている人の歌で、勇気の歌でもあります。

前半の五月雨式に単語を連打して、混乱してる精神を生々しく伝える表現もすごいし、後半の展開なんかむせびものです。「一生懸命」ではなく、「0.5生懸命」という表現は本当に天才的だと思います。

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