ヒャダインが語る「REBORN(リボーン)」
『死や再生というテーマを、浮遊感のあるメロディでも表現』
山下達郎さんの音楽は本当にスペシャルで、ほかと比べようがないんですよね。曲を聴いてあれっぽいなとか、これに影響を受けたんだなということってよくあると思うんですけど、そう感じることがない、ワン・アンド・オンリーなジャンルを聴いているイメージがあります。それは、今回のアルバムに関しても強く感じました。
「REBORN」は、北海道で一人旅をしている時に現地のFMから流れてきて、もともと大好きだった曲。車を運転しながら、ツーっと涙がこぼれたのを覚えています。死生観を歌った歌詞は、とても深い。
悲しかったり、辛かったりする死を、「いつの日かふたたびよみがえり」「少しだけのさよなら」と、温かくそっと包んでくれる。友人の猫が死んでしまった時、この曲を聴いたら少し楽になるよと、リンクを送ってあげたりもしました。
これから訪れるであろうさまざまな死に対する恐怖や、悲しみをも和らげてくれる曲だと思います。音程も型にはまらない山下さん独特の進み方で、決して予定調和で終わりません。
メロディが基本となるルートの音に戻らず、安定していない感じが、曲がテーマとする再生してまた出会うこと、死が終わりではないということにもつながってくる。浮遊感があって、帰結を迎えないイメージがうまく出ていて、さすがだと思いましたね。
旅をテーマにしたCMに使われた「蒼氓」も、上京して孤独や寂しさを覚えていた時に、歌詞が自分の人生とリンクした曲です。CMの曲としても見事にハマっていてカッコ良かった。特に、都会の風景の中で聴くと、人生のBGMとしてふくよかになる曲だなと感じます。僕の勝手な解釈ですが、山下さんは風の使い手だと思うんですよね。
どんな曲においても、歌詞の中にも、密閉感でなくブリージーなものを感じる。景色や状況とブレンドされることによって、映える曲たちだなと。そして、こうした大きなテーマを歌っている曲が、決して高僧のお説法のようにならずに、優しく寄り添ってくださるのもすごいなと思うんです。